物悲ものがな)” の例文
は、ふかい、ふかい、うれいにしずみました。毎日まいにちやまいただきとおくもは、灰色はいいろ物悲ものがなしいものばかりでありました。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
領主 物悲ものがなしげなるしづけさをばこの朝景色あさげしきもたらする。かなしみてか、おもてせぬわ。いざ、とも彼方かなたて、きぬ愁歎なげきかたはん。ゆるすべきものもあれば、ばっすべきものもある。
物悲ものがなしく寂しくてたまらなくなった、二三日寝汗をかいたことを思い出し、人々の希望にそむくようになりゃしないかという懸念けねんが、むらむらと胸先へたぎりきて涙がぼろぼろと落ちた。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
すると、かなたには灰色はいいろうみ物悲ものがなしくえて、そのおきほうくらくものすごかったのでありました。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これをた、せがれは、いくら達者たっしゃのようにえても、としをとられて、もうろくなされたのかしらんと、老父ろうふうえあんじて、なんとなくそれからはなしもはずまず、物悲ものがなしくなったのです。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、そのひとたちの死骸しがいは、えたおおかみやくまにべられたか、つかりませんでした。ただ、この物悲ものがなしい音色ねいろは、かぜおくられて、そののち幾夜いくよも、この広野ひろのそらただよっていたのです。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)