牛頭ごず)” の例文
愛せらるべき、わが資格に、帰依きえこうべを下げながら、二心ふたごころの背を軽薄のちまたに向けて、何のやしろの鈴を鳴らす。牛頭ごず馬骨ばこつ、祭るは人の勝手である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しからば帝食うただけの卵を出すべしとて、牛頭ごず人身じんしんの獄卒して、鉄床かなとこ上にしたる帝を鉄梁もておさえしむるに、両肩裂けて十余石ばかりの卵こぼれづ。
……まん中に呪い殺したい奴の人形を書き、右左から牛頭ごず馬頭めずと二人の亡者に両手を引かせた絵をかく。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
死骸になっての、空蝉うつせみの藻脱けたはだは、人間の手を離れて牛頭ごず馬頭めずの腕に上下からつかまれる。や、そこを見せたい。その仮髪かつらぢゃ、お稲の髪には念を入れた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
体は日に増して恢復して行ったが、心の苦悶は肉体と反対に日夜、慚愧ざんき牛頭ごず馬頭めず苛責せめられた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神田明神は祇園ぎおん三社、その牛頭ごず天王祭のお神輿みこしが、今日は南伝馬町の旅所から還御になろうという日の朝まだき、秋元但馬守あきもとたじまのかみの下屋敷で徹宵酒肴てっしょうしゅこうの馳走に預かった合点長屋の釘抜藤吉は
又極楽の写真を見た事もございませんから当にはなりませんが、併し悪い事をすると怨念おんねんが取付くから悪事はするな、死んで地獄へくとの如く牛頭ごず馬頭めずの鬼に責められて実にどうもくるしみをする
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
従来、祇園ぎおんの社も牛頭ごず天王と呼ばれ、八幡宮はちまんぐうも大菩薩と称され、大社小祠しょうしは事実上仏教の一付属たるに過ぎなかったが、天海僧正てんかいそうじょう以来の僧侶の勢力も神仏混淆こんこう禁止令によって根からくつがえされたのである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
浅黄あさぎの帯に扱帯しごきが、牛頭ごず馬頭めず逢魔時おうまがとき浪打際なみうちぎわ引立ひきたててでもくように思われたのでありましょう——わたくしどもの客人が——そういう心持こころもちで御覧なさればこそ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自身を千金銭に売って諸貧人に施し他国の波羅門の奴たり、たまたま薪を伐りに山に入って牛頭ごず栴檀を得、時にその国の王癩病に罹り名医の教に従い半国を分け与うべしと懸賞して牛頭栴檀を求む
「やい、牛頭ごず馬頭めず
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疣々いぼいぼ打った鉄棒かなぼうをさしにないに、桶屋も籠屋かごやも手伝ったろう。張抜はりぬきらしい真黒まっくろ大釜おおがまを、ふたなしに担いだ、牛頭ごず馬頭めずの青鬼、赤鬼。青鬼が前へ、赤鬼が後棒あとぼうで、可恐おそろしい面をかぶった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牛頭ごず馬頭めずだ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛頭ごずよ、牛頭よ、青牛よ。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)