かがや)” の例文
景陽宮の深殿しんでんは、ここかがや祗候しこうだった。出御しゅつぎょ金鈴きんれいがつたわると、ほどなく声蹕せいひつむちを告げること三たび、珠簾しゅれんサラサラと捲き上がって
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう云いながら、静かに今ヤンセンのあけた、秘密金庫に歩みよって、中から燦爛とかがやく一連の頸飾を取り出した。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人口の衆多なること兵士の武勇なること近国に比類なくして、一時はその名誉を四方にかがやかしたることあり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
電燈ばかりこうこうとかがやいている深夜の廊下のまん中に愚かそうに立ちすくんでいたが、ふと其処にただよっている臭いが過酸化水素の臭いだと気づくが早いか
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そのとき、流れあっているものを感じたように峯子が顔をげておだやかに真直な視線で慎一を見た。その峯子の瞳は日向で金ぽい茶色にかがやいている。慎一は美しいと思った。
杉垣 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
と同時に、照空灯しょうくうとうのようにかがやいていた赤光も、どこかに見えなくなった。ただあとには、さらに高い怪音が、ビビビーン、ビビビーンと、かすかに敬二の耳をうつばかりになった。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かうして橘屋の将来は、いつまでもかがやかしく発展するのだ……。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
すべっすべっ皮膚は砲身の如くかがやいている
(新字新仮名) / 今村恒夫(著)
森も陽も大草原も、岸も其処ではかがやいた!
その誠忠は日月とともにかがやき、その功名は天地とともに永かるべきはずなるに、世人みな薄情にしてこの権助を軽蔑し、碑の銘を作りてその功業を称する者もなく
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
釣でもしていたか、竹ノ子笠に、碁盤縞ごばんじまのツツ袖水着みずぎ、笠のかげながら、大きな出目でめは、らんとかがやき、筋骨はさながらくろがねといえば言い尽きる。ひたと、ふなべりそろえつつ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゴンゴラ将軍の瞳がかがやいた。
一方の林冲は、なおののしりつづけている。その林冲の胸先をかろく制して、呉用の位置は、彼をさえぎるような恰好を見せてはいたが、まなこは王倫の姿を焦点にかがやいていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その士気の凜然りんぜんとして、に屈せずこうげず、私徳私権、公徳公権、内におさまりて外に発し、内国の秩序、斉然巍然せいぜんぎぜんとして、その余光を四方にかがやかすも決して偶然にあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
御国のためのあなた方の御苦労は、きっときっと、万倍、億倍にもなって、同胞はらからの上にかがやきましょう。大君もおくみとり下さいましょう。神々もみそなわしましょう。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れからその医師が光りかがやとうとってグット制すと、大造たいそうな血がほとばしって医者の合羽は真赤になる、夫れから刀の切口きりぐち釘抜くぎぬきのようなものを入れて膀胱ぼうこうの中にある石を取出すとかう様子であったが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
善信の眼には、彼のここまでみがきぬいてきた信心が、こってひとみとなっているようにかがやいていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これでこそ、菊水旗の御遺志は、いよいよ御後室と御遺子にかけてまでかがやかしい」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おのれ、今に見よと、あらぬ方にかがやくかれのまなこ情恨じょうこんふたいろの血の筋が走る。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別邸の夜に、明治大正時代のシャンデリヤがかがやいたころ、この一農家では、英世少年が志す勉学の資もままにならなかった。ところが、戦後の東京では、元宮邸という料理屋もめずらしくはない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先でも、いつ迄も眼をかがやかしていた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)