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烙
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や
ふりがな文庫
“
烙
(
や
)” の例文
同時に、将門にとっては、拭うことのできない「反逆者」「乱暴者」という印象を、堂上公卿の頭に
烙
(
や
)
きつけてしまったものであった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眼は開いていてじっと彼を見つめており、あの最後の表情はまるで彼女の額に
刻
(
きざ
)
み込まれたか
烙
(
や
)
きつけられたかのように見えた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
幼いころに心に
烙
(
や
)
きついたまま忘れるともなしに忘れ去っていたさまざまの情景を、先生の歌によって数限りなく思い出した。
歌集『涌井』を読む
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
鼎に似ると、
烹
(
に
)
るも
烙
(
や
)
くも、いずれ
繊楚
(
かよわ
)
い人のために見る目も忍びないであろう処を、あたかも
好
(
よし
)
、玉を捧ぐる
白珊瑚
(
しろさんご
)
の
滑
(
なめら
)
かなる枝に見えた。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二十六で死んだ姉、華やかで、強気で、涙もろくて、清らかな心情と義侠的なところのあったこの長姉のことは一生私の心に深く深く
烙
(
や
)
きつけられている。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
その印象の
烙
(
や
)
きつけられた姿は、おそらく彼女の生涯まで、どんなにしても離れがたく、執拗に生きてつきまとっているように思われた。「今こそ!」と彼女は考えた。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
道中も彼は深い考えに沈み、ほとんど物も言わずに、往来の人とか、船とか、すべての事物から、何物をか頭のなかに
烙
(
や
)
き付けようとでもするように、一々に注目して行った。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
むっとする香りと共に、俺はぐらぐらするような気がしたが、その時、むっくりもり上って居る彼女の二の腕の肉に、
烙
(
や
)
きつけられたような、蛇のような青痣を見てしまった。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
触覚の上に
烙
(
や
)
きつけられた昔の記憶が今、自分が手を置いて居る若い娘の
潤
(
うるお
)
った肩の厚い肉感に生々しく呼び覚まされると新吉の心は急に掻きむしられるように焦立
た
(
ママ
)
って来た。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その癖、二人の心には六月三十日と云ふ字が、毒々しく
烙
(
や
)
き付けられてゐるのだつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
神に祈ったりしていたその長女は、それから一年もたたないうちに死んでしまった。心配そうな
含羞
(
はにか
)
んだようなその娘の幼い面影が、今でもそのまま魂のどこかに
烙
(
や
)
きついていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
長い間乾き切つて
烙
(
や
)
きつきさうになつてゐた私の胸も、その響きに合せて高まり、活々とした血が漲り——私の肉體は
更生
(
かうせい
)
を望み——私の魂は清らかな歡喜に
渇
(
かは
)
いてゐるのでした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それ以来私は
明
(
あきらか
)
に三浦の幽鬱な
容子
(
ようす
)
が
蔵
(
かく
)
している秘密の
匀
(
におい
)
を感じ出しました。勿論その秘密の匀が、すぐ
忌
(
い
)
むべき
姦通
(
かんつう
)
の二字を私の心に
烙
(
や
)
きつけたのは、
御断
(
おことわ
)
りするまでもありますまい。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幾万の改革者が
烙
(
や
)
き殺されたことか
先駆者
(新字新仮名)
/
中山啓
(著)
火に
烙
(
や
)
かれながら、一つの氷が
或る時の詩
(新字旧仮名)
/
片山敏彦
(著)
なぜならば、音は、彼の脳裡に、肉体のあるかぎりは忘れ得ないであろうほどふかく記憶に
烙
(
や
)
きついているはずであった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そういう味わいに最初に接した時の驚嘆——「あの驚嘆を再びすることができるなら、私はどんなことでも犠牲にする」。この言葉は今でも自分の耳に
烙
(
や
)
きついている。
岡倉先生の思い出
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
まして、今日が呪われた六月三十日であると云ったような言葉は、
孰
(
どち
)
らからも、おくびにも出さなかった。その癖、二人の心には六月三十日と云う字が、毒々しく
烙
(
や
)
き付けられているのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
『ようも、悪たいを……』と、かの女は、これをさいごの憎悪として
烙
(
や
)
き残すような
眸
(
ひとみ
)
で、忠盛をにらんだ。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『道草』に書かれた時代よりも後に生まれた純一君は、父親を「気違いじみた癇癪持ち」として心に
烙
(
や
)
きつけていた。それは容易に消すことができないほど強い印象であった。
漱石の人物
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そう自分へいい聞かせながら、幾つかの呼吸を腹の下に調える間に、彼は篤と目を
凝
(
こら
)
して、初めて仰ぐ
不識庵
(
ふしきあん
)
謙信なる人の人がらをその眼の点に
烙
(
や
)
きこんだ。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この光景は、ぼくの眸をつよく
烙
(
や
)
いたとみえ、いつまでも忘れ難いものとなった。そのとき母の姿も、そこに居たのか、茶の間だったかは、よく覚えていない。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ややもすれば、この
業
(
ごう
)
が煮えたぎるように、そなたの体のうちへも、道誉という男を
烙
(
や
)
きつけねば、一生、
妄執
(
もうしゅう
)
は晴れやるまい。藤夜叉、これほど男からいわれたら、もう眼を
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うるさくなって、慧春尼は、自分で自分の顔を後には焼け火ばしで
烙
(
や
)
いたという。次の話は、それ以前の事だろう。或る時、尼は公式の使で円覚寺の壇へ
参礼
(
さんらい
)
したことがあった。
美しい日本の歴史
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左近は、白い眉に
皺
(
しわ
)
をよせた。
葡萄
(
ぶどう
)
の果肉みたいな眸でじっと見られると、正季には、ちと恐かった。腕白時代から、家来ではあっても、恐い爺と、
烙
(
や
)
きつけられていたからだ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこから一角の焦点へ向って、かちっと
烙
(
や
)
きついたまま、
眼
(
ま
)
じろぎもしないのである。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
阿波には阿波の歴史があり、この城にはこの城の
柱石
(
ちゅうせき
)
をなす掟と人心というものがある。間者を殺せば
凶妖
(
きょうよう
)
ありと申すことは、家中一統の胸に深く
烙
(
や
)
きついて、誰も信じて疑わぬまでになっている。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その時のことも、まざまざと、
童心
(
どうしん
)
につよく
烙
(
や
)
きつけられてある。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(——あわれな人々)として
烙
(
や
)
きついていたにちがいない。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女の肌に
烙
(
や
)
かれては、思い知らさずにおられない。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
烙
漢検1級
部首:⽕
10画
“烙”を含む語句
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炮烙
焙烙
火烙
烙鉄
手烙
灯烙
炮烙灸
烙傷
烙炉
焙烙地蔵
焙烙蒸
砲烙灸