もと)” の例文
単に呼吸することだけでも享楽であった。そして私は、普通なら当然苦痛のもとになりそうな多くのことからでさえ、積極的な快感を得た。
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
默つて困苦に堪へてゐる農民をして困苦に堪へしめてゐる力のもとに、この驚きと喜びとがあることは思ひのほかなのではないかと思つた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
されど汝はいかなればかく多くの苦しみにかへるや、いかなればあらゆる喜びの始めまたもとなる幸の山に登らざる 七六—七八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さうだとも、例へば、二三日前に紙のもとに就いて二行程書いてくれと頼まれても、お前たちには何にも書けなかつたらう。それはどうしてか。
何故なら、それらの試合は全く時の三大統領の政戦に附随したもので、もとはと云へば、覇者を讚へるための「大学祭り」に過ぎなかつたのである。
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「五六里でしょうな。ところで此処が川のもとです。何うです? 湧いた水がすぐに川になるところが奇蹟でしょう?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこで通常この液の中へ、エネルギーのもと即ち心臓の食物として、少量の血清アルブミンか又は葡萄糖を加えると、心臓は長い間搏動を続けるのである。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「御覧なさい、可厭いやな。どこよりさきに、沼の上が暗くなりました。これが、あの田の水のもとなんですもの。またいつかの時のような事があっては悪い。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私は、ジエィン、もうすつかり話しが濟んだと思つてゐた。あなたの憂鬱のもとは夢なんだと思つてゐたのに。」
もとは山路の苔のつゆ、さてもわけなしのお弱年としわかさまとにらむ目もとに何見えざらん、問はねどしるき與之助が心の宙宇に迷ふ有さまゝで夫れと呑みこめば
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御承知の通り琵琶にもいろいろございまして、妙音の琵琶、平家の琵琶、荒神の琵琶、地神盲僧の琵琶……名はいろいろでございましても、もとは一つでございます
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そろへ何とも申譯御座なくと申にぞ越前守殿只今に相成申譯なしと申せども其奉行頭人たる者あやまち有ば則ち領主の罪領主の罪は則ち將軍家の罪なり民は國のもと無罪の民を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それらまさかこの禁忌のもとであるまいが、一九〇六年版ワーナーの『英領中央亜非利加土人篇ゼ・ネチブス・オブ・ブリチシュ・セントラル・アフリカ
娘の欠点は、自分の恥のもとともなります。父親のバニカンタは、却って他の娘達より深くスバーを愛しましたが、母親は、自分の体についた汚点しみとして、厭な気持で彼女を見るのでした。
と、まあ、もとは一つだけれども、こんな風に別れて来ていたんだ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
れが愁歎なげきもとさへれゝば、すぐにも療治れいぢしたうおもふのぢゃが。
百合 水のもとはこの山奥に、夜叉ヶ池と申します。すごい大池がございます。その水底みなそこには竜がむ、そこへ通うと云いまして——毒があると可恐こわがります。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
汝等の學術の流れのもととなるならはしなる經驗は——汝もしこれに徴せば——この異論より汝を解くべし 九四—九六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一寸したハズミがもとになつて自分にも一つの首枷がついてしまつた、あいつより他にこの苦しみを訴へる者はないのかと思ふと、直ぐにも彼に会はずには居られさうもなくなつた。
夏ちかきころ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それで薩摩の国の琵琶は、おさむらい風の勇ましいものでございます、私共が習いました平家琵琶とは、なかなか趣がちがったものでございます、けれどももとはみんな一つでございまして、やはり
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼即ち我に、汝は程なく汝の目が風をらすもとをみてこれが答を汝にえさすところにいたらん 一〇六—一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
な、それがもとで、人間が何をしょうと、かをしょうと、さっぱり俺が知った事ではあるまい。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人ひとりだにこゝに義者たゞしきものありや、またかく大いなる不和のこゝを襲ふにいたれるもとを我に告げよ 六一—六三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
な、其がもとで、人間が何をせうと、をせうと、薩張さっぱり俺が知つた事ではあるまい。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)