涙脆なみだもろ)” の例文
真剣に言っても浮気に取られるのが口惜くやしい、わたしだって時と場合によれば、ずいぶんこれで涙脆なみだもろいことがありますのよ。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お種は三吉の方を振返って見て、「お仙はこれで極く涙脆なみだもろいぞや。兄さんに何か言われても直に涙が出る……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それをもの單純たんじゆんかんがへるひとは、悲觀的ひかんてき涙脆なみだもろ氣持きもちだといつて、いけないものとしてゐるが、人間にんげんはいつもにこ/\わらつてゐるものばかりのものではありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
人一倍涙脆なみだもろくて、思ひやりのある平次が、ケロリとしてこんな事を言ふ心持が解らなかつたのです。
(それに不思議はない筈だ。涙は亭主の生きてゐるうちに、みんな絞り出してしまつたのだから。)そんなてあひ涙脆なみだもろい女を見つけて、一瓶幾らといふ値段で涙を買取つて
ある在方ざいかたへくれる話を取り決めて、先方の親爺おやじがほくほく引き取りに来た時、尫弱ひよわそうな乳呑ちのを手放しかねて涙脆なみだもろい父親が泣いたということを、母親からかつて聞かされて
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
つぶさに申ければ權三は一たい涙脆なみだもろき男なるが助十にむかひ何と此御若衆このおわかいしゆが鈴ヶ森に居たる時に我々われ/\通掛とほりかゝるも不思議ふしぎまたすゞもりにて小便をする時彦兵衞殿のはなしをしたもこれ神佛かみほとけ御引合おんひきあはせにて其孝心そのかうしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
神様といふものは随分費用のかゝるものだが、その中で新教プロテスタントの神様は質素じみで倹約で加之おまけ涙脆なみだもろいので婦人をんなには愛されるほうだが、余りに同情おもひやりがあり過ぎるので、時々困らせられる。
『昔風に亭主に便たよるといふ風で、どこまでも我輩を信じて居た』といふ女の若い時は——いづれこのお志保と同じやうに、情の深い、涙脆なみだもろい、見る度に別の人のやうな心地こゝろもちのする
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
罪のない子役のませた仕草しぐさは、涙脆なみだもろ桟敷さじき婦人をんな客を直ぐ泣かせる事が出来るので、横着な興行師しうち俳優やくしややは、成るべく年端としはかない、柄の小さい子役を舞台に立たせようとする。
花の型のある紙を切地きれぢ宛行あてがったり、その上から白粉おしろいを塗ったりして置いて、それに添うて薄紫色のすが糸を運んでいた光景さまが、唯涙脆なみだもろかったような人だけに、余計可哀そうに思われて来た。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)