洞門どうもん)” の例文
その下豊しもぶくれが少し過ぎてほおのあたりの肉今や落ちんかと危ぶまるるに、ちょっぽりとあいた口は閉ずるも面倒といいがおに始終洞門どうもんを形づくり
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
するとこの人骨の主は、自分でこの洞門どうもんの扉をやぶり、中へはいってこの位置でぜつめいしたとは思われません。つまり何者かが、この人骨の主の死体を
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また、そとには、まえにもいったとおり、二つの洞門どうもんがあって、配下の野武士のぶしが五人ずつ交代こうたいで、篝火かがりびをたきながら夜どおし見はりをしている厳重げんじゅうさである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洛陽伽藍記らくやうがらんきふ。帝業ていげふくるや、四海しかいこゝに靜謐せいひつにして、王侯わうこう公主こうしゆ外戚ぐわいせきとみすで山河さんがつくしてたがひ華奢くわしや驕榮けうえいあらそひ、ゑんをさたくつくる。豐室ほうしつ洞門どうもん連房れんばう飛閣ひかく
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此処から来路らいろを見かえると、額縁がくぶちめいた洞門どうもんしきられた宇治川の流れの断片が見える。金剛不動の梵山ほんざん趺座ふざして、下界流転るてんの消息は唯一片、洞門をひらめき過ぐる川水の影に見ると云う趣。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すぐあとから、加賀見忍剣かがみにんけん木隠龍太郎こがくれりゅうたろうのふたりが、右翼うよく左翼の力をあわせて、おのおの二十人ほどひきつれ、えいや、えいや、洞門どうもんの前へおしよせてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてヘリコプターは、山腹さんぷくにあけられた大きな洞門どうもんの中へ吸いこまれてしまった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ご両所たちは搦手からめての先陣。まず小文治どのは槍組やりぐみ十五名の猛者もさをつれて、人穴ひとあなの殿堂よりながれ落ちている水門口をやぶり、まッ先に洞門どうもんのなかへ斬りこまれよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐるっと山のふもとをまわりこむと、目の前に洞門どうもんがあらわれた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「さては、うしろへ出たか」と、あわてて引っ返して、途中の有名な嶮路けんろ陳倉峡口きょうこう洞門どうもんまで来ると、上から大岩石が落ちてきて、彼の部下、彼の馬、みなくじきつぶされた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)