歩行出あるきだ)” の例文
ときくだんの、長頭ながあたまは、くるりと眞背後まうしろにむかうをいた、歩行出あるきだすか、とおもふと……じつのまゝ。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その癖かどの戸はしまっている。土間が狭いから、下駄が一杯、ステッキ洋傘こうもりも一束。大勢あんまひまだから、歩行出あるきだしたように、もぞりもぞりと籐表とうおもての目や鼻緒なんぞ、むくむく動く。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人ひとりが、高足たかあしつて、んで、すましてプラツトホームを横状よこざま歩行出あるきだすと、いまわらつたのが掻込かいこむやうにむねどんぶりつた。湯気ゆげがふつとわかれて、饂飩うどんがする/\とはしびる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おそろしいより、ゆめれて、うれしさがさきつた。暫時しばし茫然ばうぜんとしてたが、膚脱はだぬぎにつて大汗おほあせをしつとりいた、手拭てぬぐひむか顱卷はちまきをうんとめて、確乎しつか持直もちなほして、すた/\と歩行出あるきだす。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おそろしいよりも、ゆめれてうれしさがさきつた。暫時しばらく茫然ばうぜんとしてた。が、膚脱はだぬぎにつて冷汗ひやあせをしつとりいた。手拭てぬぐひむか顱卷はちまき、うんとめて確乎しつかり持直もちなほして、すた/\と歩行出あるきだした。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
折から人通りが二、三人——中の一人が、彼の前を行過ゆきすぎて、フト見返って、またひょいひょいと尻軽に歩行出あるきだした時、織次は帽子のひさしを下げたが、ひとみきっと、溝の前から、くだんの小北の店を透かした。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)