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歩行出
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あるきだ
其の
時、
件の、
長頭は、くるりと
眞背後にむかうを
向いた、
歩行出すか、と
思ふと……
熟と
其のまゝ。
その癖
門の戸は
閉っている。土間が狭いから、下駄が一杯、
杖、
洋傘も一束。大勢
余り
隙だから、
歩行出したように、もぞりもぞりと
籐表の目や鼻緒なんぞ、むくむく動く。
其の
一人が、
高足を
打つて、
踏んで、
澄してプラツトホームを
横状に
歩行出すと、いま
笑つたのが
掻込むやうに
胸へ
丼を
取つた。
湯気がふつと
分れて、
饂飩がする/\と
箸で
伸びる。
恐ろしいより、
夢と
知れて、
嬉しさが
前に
立つた。
暫時茫然として
居たが、
膚脱ぎに
成つて
大汗をしつとり
拭いた、
其の
手拭で
向う
顱卷をうんと
緊めて、
氣を
確乎と
持直して、すた/\と
歩行出す。
恐しいよりも、
夢と
知れて
嬉しさが
前に
立つた。
暫時茫然として
居た。が、
膚脱ぎに
成つて
冷汗をしつとり
拭いた。
其の
手拭を
向う
顱卷、うんと
緊めて
氣を
確乎と
持直して、すた/\と
歩行出した。
折から人通りが二、三人——中の一人が、彼の前を
行過ぎて、フト見返って、またひょいひょいと尻軽に
歩行出した時、織次は帽子の
庇を下げたが、
瞳を
屹と、溝の前から、
件の小北の店を透かした。