欲望よくぼう)” の例文
雖然周三は、其れにすら何等の不滿を感ぜず、したと胃の腑の欲望よくぼうを充すよりも、寧ろ胸にゆたかな興趣きやうしゆくのを以つて滿足した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いかに、その姿すがたは、ちいさく、うつくしくても、欲望よくぼうかぎりのないことがられたのです。そして、それは、おそろしいことでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
何かたいへんなことがはじまったような気がした。正九郎はもうあらゆる欲望よくぼうをすてて、このまま帰ってもいいと思った。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
久保田万太郎君くぼたまんたらうくんの「しるこ」のことをいてゐるのをぼくまた「しるこ」のことをいてたい欲望よくぼうかんじた。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからこちらの住人じゅうにんとしてなによりつつしまねばならぬは、うらみ、そねみ、またもろもろの欲望よくぼう……そうったものにこころうばわれるが最後さいご、つまりは幽界ゆうかい亡者もうじゃとして
はじめのうちは、犬もさるもダンスをする気にもなれないらしかった。かれらの欲望よくぼうは食べ物のほかになかった。そのいじらしい様子を見ると、わたしのむねいたんだ。
人間にんげんも、まちがったかんがえや、欲望よくぼうさえもたなければ、たがいに、したしみあうことができて、うつくしいにちがいがありません。
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうして、いままでよりか、みんなに一つ欲望よくぼうしたので、いつか、このひか銀貨ぎんかのためにあらそいがこらなければならなくおもわれたのでした。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この不思議ふしぎひかるものが、部落ぶらくはいってきてからは、みんなにもそれがしいという欲望よくぼうこりました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、もっとたい、もっとりたい、もっとあじわいたいという欲望よくぼうは、かずかぎりなくあったが、だんだん体力たいりょくおとろえるのをどうすることもできませんでした。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんは、もうなんにも刺戟しげきほっしない。またたいした欲望よくぼうもない。ただ、平静へいせいにじっとしていたい。この電燈でんとうが、自分じぶんであったら、自分じぶんは、どんなに幸福こうふくであろう……とおもったのでした。