業平橋なりひらばし)” の例文
一度も?——若し一度でも通つたとすれば、それは僕の小学時代に業平橋なりひらばしかどこかにあつた或可也かなり大きい寺へ葬式に行つた時だけである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから父は私の手をひいて、曳舟通りをぶらぶらしながら、その頃出来たばかりの業平橋なりひらばし駅の方へ連れていってくれた。それが私の忍耐の報酬だった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
子分のガラッ八をれて神田からわざわざやって来ると、利助の子分を十人ばかり駆り集めて、西は大川、東は業平橋なりひらばし、南は北割下水、北は枕橋の間を
ゆえあって父文吾の代より浪人となり、久しく本所ほんじょ業平橋なりひらばし住居すまいいたして居りましたが、浪人でこそあれ町地面まちじめん屋敷等もありまして、相応の暮しをして居りました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
作意でほぼその人となりも知れよう、うまれは向嶋小梅むこうじまこうめ業平橋なりひらばし辺の家持いえもちの若旦那が、心がらとて俳三昧に落魄おちぶれて、牛込山吹町の割長屋、薄暗く戸をとざし、夜なか洋燈をつけるどころ
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それとも左に折れて業平橋なりひらばしの方に向ったのか、どう手を尽しても分らないのです。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
着飾った若い花見の男女をせていきおいよく走る車のあいだをば、お豊を載せた老車夫はかじを振りながらよたよた歩いて橋を渡るや否や桜花のにぎわいをよそに、ぐとなかごうへ曲って業平橋なりひらばしへ出ると
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
すると男が「ふん、そんなら国道の業平橋なりひらばしのとこで降りたらよろしいがな」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一度も?——し一度でも通ったとすれば、それは僕の小学時代に業平橋なりひらばしかどこかにあった或かなり大きい寺へ葬式に行った時だけである。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
東は業平橋なりひらばし、南は北割下水、北は枕橋まくらばしの間を、富士の卷狩りほどの騷ぎで狩り出したものです。
ひさしぶりで業平橋なりひらばしの方まで行き、そこの駅の中で、ぴかぴか光った汽車が何処どこか遠くのほうに向って出発するのをひととき見送ってから、いかにも満足した気もちになって
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
小庭こにはへだてた奧座敷おくざしき男女なんによ打交うちまじりのひそ/\ばなし本所ほんじよも、あのあんまおくはうぢやあわたしいやアよ、とわかこゑなまめかしさ。旦那だんな業平橋なりひらばしあたりうございますよ。おほゝ、とけたこゑおそろしさ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
着飾きかざつた若い花見の男女をせていきほひよく走る車のあひだをば、おとよせた老車夫はかぢりながらよた/\歩いて橋を渡るやいな桜花あうくわにぎはひをよそに、ぐとなかがうまがつて業平橋なりひらばしへ出ると
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つい業平橋なりひらばしを渡つて、ハンドルを神戸の方へ向けた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その中でも業平橋なりひらばしの房吉といふのが、昔の良い男の業平にあやかり度いやうな顏をして居ますが、小博奕ばくちが好きで身が持てないから、死んだ先代の權右衞門は、寄せつけないやうにして居た相で