朱漆しゅうるし)” の例文
大阪に見えない鴻山こうざんはどうしたろうとか、俵一八郎の伝書鳩はどうだとか、木曾のお六ぐし朱漆しゅうるしをかけてミネに銀の金具をかぶせ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十畳の間、真中に紙張しちょうが吊ってあって、紙張の傍に朱漆しゅうるし井桁いげたの紋をつけた葛籠つづらが一つ、その向うに行燈あんどんが置いてある。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
谷中は寺の多い処だからでもあろうか、朱漆しゅうるしの所々に残っている木魚もくぎょや、胡粉ごふんげた木像が、古金ふるかねかずそろわない茶碗小皿との間に並べてある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ふたには、うろこのかたにみがきをかけた松の皮をそのまま用いて、上には朱漆しゅうるしで、わからぬ書体が二字ばかり書いてある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白木しらきのものを別として塗は拭漆のもの多く稀には墨漆すみうるし朱漆しゅうるし。しばしば特殊な衣裳いしょうをこらしてある。透彫すかしぼり浮彫うきぼりや、また線彫せんぼりや、模様もまた多種である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
船橋は有名な古肆こしで、御菓子司おかしづかさの称号を暖簾のれんに染め出していた御用達ごようたしである。屋号を朱漆しゅうるしで書いた墨塗の菓子箱が奥深く積み重ねてあって、派手な飾りつけは見せていない。
ひらいて見れば、金無垢きんむくの観音の立像りつぞうでございます。裏を返して見れば、天民てんみんつゝしんでこくすとあり、厨子の裏に朱漆しゅうるしにて清水助右衞門としるして有りますを見て、清次は小首を傾け。
「金の脇立物、朱漆しゅうるしの具足の士と槍を合せたが、その武者振見事であった」
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
横合よこあいから投げ独楽ごまをすくいったあかぼうと見えたのは、朱漆しゅうるしをといだ九しゃくやりであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「近頃、めずらしいお話をうけたまわった。その折の武者の具足は、朱漆しゅうるしとは御覧なかりしか?」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
張飛の顔は朱漆しゅうるしを塗ったように燃えた。その虎髯とらひげの中から大きく口をあいて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姫路革ひめじがわ状筥じょうばこ朱漆しゅうるしに短檠の灯がてらと照った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)