朝野ちょうや)” の例文
大統領をはじめ朝野ちょうやの名士を多数招待して封切ふうぎる場合はとてもすばらしいぞ。僕はケンと一しょに舞台にのぼる。嵐のような拍手だ。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
朝野ちょうやの貴顕紳士と称する俗輩が、何々の集会宴会と唱えて相会するは、果して実際の議事、真実の交際の為めに必要なるや否や。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
昔は七歳の少童が庭に飛降って神怪驚くべき言を発したという記録が多く、古い信仰では朝野ちょうやともに、これを託宣と認めて疑わなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
朝野ちょうやともようやく安堵あんどの思いをしたところ、またまた大兵を動かすとあっては諸大名の困窮、万民の怨嗟えんさはまことに一方ひとかたならないことで
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日比谷ひびやには公園いまだ成らず銀座通ぎんざどおりには鉄道馬車の往復ゆききせし頃尾張町おわりちょう四角よつかど今ライオン珈琲店コーヒーてんあるあたりには朝野ちょうや新聞中央新聞毎日新聞なぞありけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
改元は、朝野ちょうやの一新と希望の下におこなわれるもの。——だがこれは、後になってみてのことだが、まことに、めでたからぬ分裂改元の始めとなった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大神楽だいかぐらの増鏡磯吉、綱渡りの勝代、曲芸の玉本梅玉あたりを一座として、日本の朝野ちょうやがまだ眠っている時分に、世界の大舞台へ押出した遊芸人の一行があります。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明治十年の西南戦争は、明治政府の功臣たちの間の争いであり、兵の組織も新式になってからであるから、薩南さつなんの地であったとはいえ、朝野ちょうやを挙げて関心をもっていた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もう三十五年くらい前の話であるが、千里眼の問題が、数年にわたって我が国の朝野ちょうやを大いに騒がしたことがあった。私たちも子供心にその頃は千里眼を全く信じていた。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それは朝野ちょうや新聞から、後の万朝報まんちょうほうに立てこもった、黒岩涙香るいこうの翻訳探偵又は伝奇小説の、恐るべき流行に対する、出版者達の対抗運動で、当時硯友社けんゆうしゃの根城のようになっていた
信任状を捧呈ほうていせられたばかりの新大使であったが、当時帝国ホテルで朝野ちょうやの歓迎宴を張った際、鷲尾侯も出席して、今日の御訪問も、その時からの御約束が延び延びになっていた訳だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
当代無双の宏才博識として朝野ちょうやに尊崇されているこのふる入道に対しては、関白も相当の会釈をしなければならなかった。ことに学問を好む忠通は日頃から信西を師匠のようにもうやまっていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
頭も尻尾しっぽもないような物だった。その頃は新聞に雑録というものがあった。朝野ちょうや新聞は成島柳北なるしまりゅうほく先生の雑録で売れたものだ。真面目な考証に洒落しゃれが交る。論の奇抜を心掛ける。句の警束をねらう。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
董太師とうたいし郿塢びうへ還る。——と聞えたので、長安の大道は、拝跪はいきする市民と、それを送る朝野ちょうやの貴人で埋まっていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
墺地利オーストリアとの戦争、又アルサス、ローレンスの事なども国交際こっこうさいの問題として、いずれ後年には云々の変乱が生ずるであろうなんとうことは朝野ちょうや政通せいつうの予言する所で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
案内を受けた朝野ちょうやの名流は、ゾロ、ゾロ、ゾロと定刻からこの妾宅へ詰めかけて来ました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
言問団子の主人は明治十一年の夏七月より秋八月の末まで、都鳥の形をなした数多あまた燈籠とうろうを夜々河に流して都人の観覧に供した。成島柳北は三たびこの夜の光景を記述して『朝野ちょうや新聞』に掲げた。
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ただ今日の文明主義に変化して開国一偏に国事を経営してれゝば遺憾なしと思えども、何かの気まぐれに官民とか朝野ちょうやとかいやに区別を立てゝ、私塾を疏外し邪魔にして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「足下は、人も知る開国の功臣たる将軍の玄孫だ。再び、朝野ちょうやに名をあげ給え」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎年東京へ来て朝野ちょうやの有力者を訪問する。三年目には視察と称して米国へ出掛け半年位たって帰って来ると盛んに演説をして廻る。まアそれも結構です。わたしの甚だ気に入らないのは去年の事だ。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
朝野ちょうや共に物論沸騰して、武家は勿論もちろん、長袖の学者も医者も坊主も皆政治論にいそがわしく、酔えるがごとく狂するが如く、人が人の顔を見ればただその話ばかりで、幕府の城内に規律もなければ礼儀もない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)