あったか)” の例文
男は仕損しまったと心得て、だいぶあったかになりましたと気を換えて見たが、それでもげんが見えぬので、鯉がの方へ移ろうとしたのである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もしや暑い日であったかい料理を好まなければ今の鳥をロース焼にしておいて肉を細かくして林檎りんごの小さく切ったのか胡瓜きゅうりかパセリーかと混ぜて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そしてお若さんもお炬燵こたへ、まあ、いらっしゃいまし、何ぞおあったかなもので縁起直しに貴下一口差上げましょうから
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れから大阪はあったかい処だから冬は難渋な事はないが、夏は真実の裸体はだかふんどし襦袢じゅばんも何もない真裸体まっぱだか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「じゃア行こうよ。今年はいやにあったかいじゃないか。また地震かも知れないぜ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
武「いや沢山たんとはないたった十金だから、なんあったかい物でも買っておあがり」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あったかとこをお一つ。』と、勧むるにぞ
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
あったかいわ、ね」
青い紐 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小山の妻君「一週間も置いたら肉が腐りは致しませんか」お登和嬢「一週間置いて腐るようなあったかい季節には猪を ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
せめて頭だけでもあったかにしたら、足の方でも折れ合ってくれるだろうとの、はかない望みから出た窮策であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……あったかい!……」を機会きっかけに、行火あんかの箱火鉢の蒲団ふとんの下へ、潜込もぐりこましたと早合点はやがってんの膝小僧が、すぽりと気が抜けて、二ツ、ちょこなんと揃って、ともしびに照れたからである。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冬でもあったかい処にあると早く弛みますし、時候によっても違いますから一々その場合を考えなければなりません
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すなわちまた、その伝で、大福あったかいと、向う見ずに遣った処、手遊屋おもちゃやおんなは、腰のまわりに火の気が無いので、膝が露出むきだしに大道へ、茣蓙ござの薄霜に間拍子まびょうしも無く並んだのである。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これもあったかい時と寒い時と北国と南方で違いますからその斟酌しんしゃくをしなければなりませんが随分世間には殺したばかりの牛肉をロースやビフテキにするという間違った事もあります。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そうやっていつの間にやらうつつとも無しに、こう、その不思議な、結構な薫のするあったかい花の中へ柔かに包まれて、足、腰、手、肩、えりから次第しだい天窓あたままで一面にかぶったから吃驚びっくり、石に尻餅しりもちいて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ほっこり、あったかい、暖い。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大福餅、あったかい!」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)