昨夜ゆんべ)” の例文
吾輩が昨夜ゆんべ焼いてしまった心理遺伝論のおしまいに、附録にして載せようと思っていた腹案の骨組みだけをつまんで話すと、こうだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どうしてえおとつゝあ、昨夜ゆんべはそんでもさむかなかつたつけゝえ」かれ荷物にもつ卯平うへいすそはうおろしてむねむすんだおびきながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
昨夜ゆんべおそく、郡書記が通りすがりに、ひよいと見るてえと、空気窓かざまどから豚の鼻づらが戸外そとをのぞいて、ゲエゲエ呻つたちふだよ。
仙「安さん其の刀を盗んださむれえは、昨夜ゆんべのう己も佐賀町河岸で見たが、おめえがソノ新橋から乗せたという頭巾を冠った侍だ」
昨夜ゆんべの火事で、あんたの奥さんと御子さんが逃げ遅れて焼け死んで了ったよ、と悔みの言葉を吐くではありませんか? 昨夜人事不省に陥って居た私は
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
(大納言、嬉し気な表情)昨夜ゆんべ、あれの部屋に行って、ふと何気なく見ましたところが、お手紙ふみつるに折られて、天井てんじょうからぶるさがっておりましたじゃ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「五人も、ずらかるのに気づかんなんて、貴様は、鉛か。……どうも、昨夜ゆんべ、玉井の様子がおかしいと思うた」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いくら訊いても、はつきりしたこたあ云はんし、昨夜ゆんべでん、おらあ、もう面倒臭うなつたけん、どぎやんでん、よかごつするがよかて、そぎやん云うてやつたたい。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「何やのて、ほんまに、えらいこっちゃ。あんたとこの人が、昨夜ゆんべうちの店へ来て、散財しやはってん」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
昨夜ゆんべの、水上署の大縮尻しくじりを、見ていたかい。沖でグルグルどうどうめぐりよ。見てるほうで気が揉めたくらいだった。……いやしかし、どうもこいつア、思ったよりも大きな事件になるらしいぜ」
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
阿魔あまがね昨夜ゆんべ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
オイ。了念了念。昨夜ゆんべ般若湯はんにゃとうの残りがあろう。ソレソレ。それとあのギスケ煮(博多名産、小魚の煮干にぼし)の鑵を、ここへ持って来なさい
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よね ほんなこたあ、昨夜ゆんべロオラさんが来て、ムツシユウ・真壁ばピストルでうつたツたい。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「ヘエ。皆さん。今晩は……今台所の婆さんに洗わせよる、昨夜ゆんべまで玄海沖で泳ぎよった魚じゃけに、洗いに作らせといた」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よね 平生いつもん心掛んわるかけんたい。そんなら、昨夜ゆんべん騒ぎも知らんだろが。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
私も気味が悪くなりまして……ナニ赤玉には違いないが、青い黴の生えた奴を、昨夜ゆんべ十二時過に白湯で呑んだんだ。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おい、昨夜ゆんべの集りでお前たちや何を相談した?」
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「お兄さん御存じないの。昨夜ゆんべ十二時頃、轟さんと呉羽さんとが、支配人の眼の前で大喧嘩をなすった事を……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうちにフト稲佐の山奥へ、私の知っている禅宗坊主が居る事を思い出しまして、昨夜ゆんべの鐘の音は、もしやソイツの寺じゃないか知らんと気が付きました。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
先ずアンナ風に何も知らない人間を、昨夜ゆんべみたいに麻酔さしておいて、スコポラミンと阿片アヘンの合剤を注射して、一層深い、奇妙な、変ダラケの昏睡におとしいれる。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「酒田さん。私は昨夜ゆんべ、第一工場で貴方のお世話になった又野です。大火傷やけはたをしました製鉄所の職工です」
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……それでヒョッと貴様が、昨夜ゆんべのうちに金を探し出いて、ここへ来はせんかと思うて、死ぬる思いで、暗いうちに病院を脱出ぬけだいて、塀を乗越いて、ここへ来たんだぞ。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……昨夜ゆんべ陸上おかで妙な話を聞いて来たんですがね。今度お雇いになったあの伊那いな一郎って小僧ですね。あの小僧は有名な難船小僧っていういわく附きの代物しろものだって、みんな、云ってますぜ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……わかりません。昨夜ゆんべ……多分……殺された……らしう御座います」
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
タクシー代は勿論、電車賃もない、昨夜ゆんべ飲んでしまったんだから……。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
昨夜ゆんべの酒手が利いたらしくキビキビと立働らいて、間もなく帆を十分に引上げると、港中の注視の的になりながら、これ見よがしに港口を出るや否や、マトモ一パイに孕んだ帆を七分三分に引下げた。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
昨夜ゆんべその紳士が来た時には、客が少なかったと云ったね」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いいえ。昨夜ゆんべの女の方が初めてだったと思います」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「……わかりません。昨夜ゆんべ十二時頃寝ましたが、今朝起きてみますと、モウ殺されておりましたので……蚊帳越しですからよくわかりませんが、二人とも寝床の中からノタクリ出して、頭が血だらけになっております……」
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「フ——ン。それじゃ昨夜ゆんべの夜中だな」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
昨夜ゆんべも刺しておいたのか」
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ホラ御覧なさい。ビックリするでしょう。ホッホッホ。あの人が昨夜ゆんべ入院した時の騒ぎったらなかってよ。何しろ歌原商事会社の社長さんで、不景気知らずの千万長者で、女盛りの未亡人で、新聞でも大評判の吸血鬼バンパイアと来ているんですからね」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)