擦合すれあ)” の例文
と云つて其儘行過ぎようとしたが、女がまだ歩き出さずに見送つてる様だつたので、引返して行つて、鼻と鼻と擦合すれあひさうに近く立つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
轆轤ろくろきしんで、ギイと云うと、キリキリと二つばかり井戸縄の擦合すれあう音して、少須しばらくして、トンとかすかに水に響く。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ、退いた、退いた」と、源は肩と肩との擦合すれあう中へ割込んで、やっとのことでたまりへ参りますと、馬はうれしそうにいなないて、大な首を源のからだへ擦付けました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
御迷惑ごめいわくぞんぜぬが、もやそで擦合すれあうた御縁ごえんとて、ぴつたりむねあたことがありましたにより、お心着こゝろづ申上まをしあげます……お聞入きゝいれ、お取棄とりすて、ともお心次第こゝろしだい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
轆轤ろくろきしんで、ギイとふと、キリ/\とふたつばかり井戸繩ゐどなは擦合すれあおとして、少須しばらくして、トンとかすかにみづひゞく。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中央の木目もくめからうずまいて出るのが、池の小波のひたひたと寄する音の中に、隣の納屋の石を切るひびきに交って、繁った葉と葉が擦合すれあうようで、たとえば時雨しぐれの降るようで
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中央ちうあう木目もくめからうづまいてるのが、いけ小波さゝなみのひた/\とするおとなかに、となり納屋なやいしひゞきまじつて、しげつた擦合すれあふやうで、たとへば時雨しぐれるやうで
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)