より)” の例文
綱吉は殺され、平次は手を引いて、競争相手のなくなった辰五郎は、懲り性もなくよりを戻して、またお常の茶屋へ入り浸りました。
土佐の板垣一派の仕事を木葉微塵こっぱみじんにして帰るべく腕によりをかけて来たものであったが、それでは持って生れた彼一流の正義観が承知しなかった。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は兄の置いて行った書類をまた一纏ひとまとめにして、元のかんじんよりくくろうとした。彼が指先に力を入れた時、そのかんじん撚はぷつりと切れた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「かんぜんよりこせえてみづまあせば、えゝんだよ」そばから巫女くちよせばあさんのいふのもたずにくちした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
男は股引ももひきに腹かけ一つ、くろ鉢巻はちまき経木きょうぎ真田さなだの帽子を阿弥陀あみだにかぶって、赤銅色しゃくどういろたくましい腕によりをかけ、菅笠すげがさ若くは手拭で姉様冠あねさまかぶりの若い女は赤襷あかだすき手甲てっこうがけ、腕で額の汗を拭き/\
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「左様な思召おぼしめしでござんすなら、一番、あごよりをかけてお聞きに入れやしょうかな」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
尼寺の床下が、広い機織場になっていて、牢造りになった暗い穴蔵で、三十人ばかりの青坊主の女が、馬の落毛のより糸を経糸にし、自分らの髪の毛を梳きこんで呉絽を織らされていた。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その竹の棒へ練付けた羊の毛を巻いて、そうして口でもってだんだん繰出くりだして、よい加減かげんに長くなったところでよりをかけるという具合にして糸をこしらえるのですから太い糸しか出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
人の家へ雇はれたり元結の下よりを内職にしたりしてやっとその日を過してゐた。
(新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
ふつとよりになつて飛ばされて来る
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
怪盜風太郎が江戸を荒し始めてからザツト三月、江中の岡つ引が、腕によりを掛けてきそひましたが、何としても捉まへることが出來ません。
金は取り放題、責任はアメリカへというので、腕によりをかけると、ここ東京の丸の内、日本丸の機関部という、堂々青天を摩する大建築を並べた。
彼はその不規則な筋を指の先でざらざらでて見た。けれども今更鄭寧ていねいからげたかんじんよりの結び目をほどいて、一々中をあらためる気も起らなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
綱吉は殺され、平次は手を引いて、競爭相手のなくなつた辰五郎は、懲り性もなくよりを戻して、又お常の茶屋へ入り浸りました。
まったくこの五人は感心で御座いますよ。上海でこの店が駄目になりかけた時に、五人が腕によりをかけて、旦那を絞り上げて日本へ帰る旅費から、この店を
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
惣体そうたいが茶色がかって既に多少の時代を帯びている上に、古風なかんじんよりで丁寧な結び目がしてあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怪盗風太郎が江戸を荒し始めてからザット三月、江戸中の岡っ引が、腕によりを掛けて競いましたが、何としても捉まえることが出来ません。
これも腕によりをかけた向う鉢巻という奴で、そこいらを一ツゆすぶった。
よりを戻したわけでなく、いよ/\手を切るつもりで名殘りを惜しむため、若旦那を一と晩此處へ泊めたぢやありませんか。
糸だってよりをかけたたくましい麻糸だ。それを腕とこぶしとにかけて輪がねたまま竜吉の枕許に置いてあった。
鬼の留守で、へツ/\、こんなことを言つちや惡うございますが、お銀さんが腕によりをかけて御馳走をこさへ——私はまた、昔の惚氣のろけをうんと聽かせてやりました。
いづれお富と三七はよりを戻して、デレデレして居るやうな氣がしてならないから、——氣をつけろ、——とか何んとか、捨臺詞すてぜりふを殘して退散してしまひましたが——
「嘘なら、今日にも伊丹屋の若旦那とよりを戻しますよ、——でも、私はもう眞つ平御免かうむります」
よりを戻したわけでなく、いよ/\手を切る積りで名残りを惜しむため、若旦那を一と晩此処へ泊めたじゃありませんか、お通夜の帰りの情事いろごとで、こんなことは言い度くないけれど
ガラツ八の八五郎は、懷から手拭を出すと、キリキリとよりを掛けて居ります。
ガラッ八の八五郎は、懐から手拭を出すと、キリキリとよりを掛けております。
矢の根五郎吉はわけもなくつかまつたが、傳馬町の牢同心が腕によりをかけて責め拔いても、二千兩の隱し場所を白状しない。骨がくだけるまで強情を張り通して、到頭獄門になつたのは二た月前だ。
よりを戻すつもりだつたのかな」