接吻キツス)” の例文
「馬鹿め、あんなに接吻キツスまでして呉れようといふんだ、何だつて私は独逸人をこの口で噛み殺しましたと言はなかつたんだ。」
それに狙はれては、藁蘂わらしべの髮を結つた小田原在のとつさん、おへそ接吻キツスさせて置いた財布でも、無事では濟まなかつたでせう。
やがて接吻キツスおとがした。天幕テントにほんのりとあかみがした。が、やがてくらつて、もやにしづむやうにえた。所業なすわざではない、人間にんげん擧動ふるまひである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
繰り返し/\彼は私に接吻キツスした。彼の腕から離れるとき、私が目をあげると、未亡人は眞青まつさをになつて、眞面目な顏をして、呆氣あつけにとられて突立つてゐた。
『そんな容貌かほつきをしたものはまつたこのまん』と王樣わうさままをされました、『それは何時いつでも勝手かつてにわが接吻キツスする』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
などと云つて、僕の手を執つて、何度か接吻キツスしたりするんだぜ。そして君、ぴつたり凭せてゐるその柔かい肩の肉から、ないじやくりが僕の體に傳はつてくる氣持なんてないんだ。
S中尉の話 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
見る/\最後の接吻キツスを残して
最後の丘 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
その折ヘルバルトはもう相当かなりの子持ちであつたが、それでも嬰児あかんぼの顔を見ると、可愛かあいさに堪らぬやうに、接吻キツスをしたり、頬ずりをしたりした。
「あゝ、わかつた! あなたは、バァサ・メイスンの良人をつと接吻キツスしないのですね? あなたは、私の腕は既に一ぱいで、私の抱擁も他人に占められてゐると思ふのでせう?」
ひらめかして接吻キツスをした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは二十弗あつたら、接吻キツスと、酒と、今一つ料理さへ味はふ事の出来る安値あんちよくな世界がこの世の中にあるといふ事である。
たつた今も、私を接吻キツスすることを拒んだでせう。あなたは、自分をまつたくの他人にしようと思つてゐる——この家に、たゞアデェルの先生としてのみ住まうとしてゐるのです。
其辺そこらの軒下や繁みのなかからは、内証話ないしようばなしや、接吻キツスに夢中になつてゐた雀や山鳩やが慌てて真赧まつかな顔をして飛び出した。
「それは有難う。」画家ゑかきは一寸頭を下げる真似をしたが、急に真面目くさつた顔になつて、「そしてその画が御返礼に貴女あなた接吻キツスでも致しましたかね。」
画家ゑかきのミレエの細君は貧乏で食べる物が無くなつた時には、雲脂ふけだらけな頭をした亭主を胸に抱へて、麺麭パンの代りだといつて、熱い接吻キツスをして呉れたものださうだ。
中野氏はそれから間もなく英国へ渡つたが、ある日倫敦ロンドンの場末で活動写真を見た。すると、そのなかに恋人同士が一寸耳を引張つていきなり接吻キツスする場面があつた。
なかにも婦人客は、神様が接吻キツスと嘘とのために特別きやしやに拵へたらしい唇を、邪慳にげて、軽蔑さげすみきつた眼つきをして、この黄いろい肌の日本人を見た。
「はゝゝゝ。」春挙氏は多くの舞妓連を接吻キツスしたらしい唇をゆがめて笑つた。
それを見たヘンズレエ嬢は、毎日朝つぱらから停車場ていしやぢやうに詰めて、兵士を載せた汽車がプラツトフオームに着くと、飛蝗ばつたのやうに飛んで往つて、汽車の窓につかまつたまゝ、誰彼の容捨なく接吻キツスをする。
「お国のめだと思へば接吻キツス位何でもない。」