捷径ちかみち)” の例文
旧字:捷徑
不気味にすごい、魔の小路だというのに、おんなが一人で、湯帰りの捷径ちかみちあやしんでは不可いけない。……実はこの小母さんだから通ったのである。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜神より上山路村を東へ越す捷径ちかみち、センブ越えを越す途上、私は途中で殺され、面皮を剥いで谷へ投げられ、金は全部取られた。
わたくしのアパートは、戸塚三丁目にあるので、新宿から歩きだすと、途中で戸山ッ原のさびしい地帯を横断して帰るのが一等捷径ちかみちであった。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
未亡人種子の行動を探るには、そのあとをつけたり何かするよりは、専業の秘密探偵に依頼してその身元から調べ上げてもらうのが一番捷径ちかみちであろう。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
丹治はもう山におるのがいやになった。そこから向うのたにへ降りる捷径ちかみちわかれている。丹治は銃を引担ひっかついでそのみちの方へ往きかけた。鶴は動かなかった。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これは、もとより片方しか無かつた鐙を、深草で値を付けさせて置いて、捷径ちかみちのまはり道をして同じ其鐙を京橋の他の店へ埋めて置いて金八に掘出させたのだ。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
宗助は腹の中で、昨夕ゆうべのように当途あてどもないかんがえふけって脳を疲らすより、いっそその道の書物でも借りて読む方が、要領を得る捷径ちかみちではなかろうかと思いついた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
土人の好意を利用して彼ら亜細亜アジア人の海賊どもは捷径ちかみちを撰んで奥地に分け入り、我々よりも一足先に宝庫の発見をとげはしないか? ——これがラシイヌ達の心配であった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
但しは無慈悲を通す気か、気違だの騙りだのと人に悪名あくみょうを付けてけえって行くようなむごい親達から、金なんぞ貰う因縁が無えから、先刻さっきの五十両をけえそうと捷径ちかみちをして此処こゝに待受け
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
電車は大阪神戸といつたやうな、二つの都市の最も速い交通機関であるのみならず、また地獄への捷径ちかみちである事をも知つてゐる小林氏は、電車ほど人生にとつて必要なものは無いと信じてゐる。
その資金の調達には夜盗が一番捷径ちかみちだが、押込みの方は浪士が隊を組んでいるから自分は一つ単独行動に辻斬と出かけてやれ、それも盗賊改めが厳しいので、駕籠でも担いで夜の街を歩きまわり
三途まで奈落へして、……といって、自殺をするほどの覚悟も出来ない卑怯ひきょうものだから、冥途めいど捷径ちかみちの焼場人足、死人焼しびとやきになって、きもを鍛えよう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは、もとより片方しかなかった鐙を、深草で値を付けさせて置いて、捷径ちかみちのまわり道をして同じその鐙を京橋の他の店へ埋めて置いて金八に掘出させたのだ。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこから、桃枝の家までは五丁ほどで、大した道程みちのりではなかった。彼は捷径ちかみちをして歩いてゆくつもりで、通りに出ると、直ぐ左に折れて、田中町たなかまちの方へ足を向けた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それよりあなた御自分で奥さんをおもらいになるのが、一番捷径ちかみちじゃありませんか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
終始しょっちゅうその捷径ちかみちを往来している道夫は、そこに桑畑のあることは知らなかった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私の居たなわてへ入って来たその二人は、紋着もんつきのと、セルのはかまで。……田畝の向うに一村ひとむら藁屋わらやが並んでいる、そこへ捷径ちかみちをする、……先乗さきのりとか云うんでしょう。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこは——学校の傍から——町へおりる捷径ちかみちであった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)