押潰おしつぶ)” の例文
お前の死は僕を震駭しんがいさせた。病苦はあのとき家のむねをゆすぶった。お前の堪えていたもののおおきさが僕の胸を押潰おしつぶした。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
一方いつぱう廣庭ひろにはかこんだ黒板塀くろいたべいで、向側むかうがは平家ひらや押潰おしつぶれても、一二尺いちにしやく距離きよりはあらう、黒塀くろべい眞俯向まうつむけにすがつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから今近衛公爵の御話の通り離間中傷りかんちゅうしょう、これがその間に乗じ種々の外道のために悪魔のために、この東京専門学校は一時押潰おしつぶされるところであった。
それを押潰おしつぶそうとするし、生活の内容に依って自分自身の型を造ろうと云う人は、それに反抗すると云うような場合が大変ありはしないかと思うのです。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大きい蟻は車輪の如くにまはす運動を繰返して小さい蟻を押潰おしつぶさうとするが、小さい蟻はそれに任せて置いて、一時死んだやうになるが、死んでは居ない。
三年 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
危ないドブ板を踏むと、奥からは押潰おしつぶされたような声、平次は、さすがにギョッとして立止まります。
けれども英雄豪傑となる原素を含んでいる者を押潰おしつぶして、平凡的普通に教育する教育は、これまた教育の目的にそむくものであって、それだけの要素を含んでいるものは
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
腰骨のあたりを押潰おしつぶされて……。彼は唇まで紙のように白くなり、歯をくいしばっていた。真沙は悲鳴をあげて、小間使と下女の名を呼びながら伊助の側へ膝をついた。
柘榴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
桃配りという名は、家康が桃を配ったからだというのは道庵一流のヨタだが、この地点に徳川家康が百練千磨の麾下きかの軍勢を押据えて、西軍を押潰おしつぶしたという史蹟は争えないものがあるのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は押潰おしつぶされたように、へたへたと雪の中に倒れてしまった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
くだかれけれども主税之助がなせる所爲しよゐ悉皆こと/″\くよろしからざるに付甚だ口惜くちをしき事に思はれ又家來けらい山口惣右衞門ばんすけ十郎建部郷右衞門の三人の忠臣ちうしん志操こゝろざし深しと雖も主人主税之助が所爲しよゐ押潰おしつぶされ渠等三人の忠志ちうし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この六月に咲く赤い花弁はなびらの上に押潰おしつぶして
横薙よこなぎやいばが抜けると、そのもの、長髪をざっとさばく。驚破すわ天窓あたまから押潰おしつぶすよと、思うにず、二丈ふたたけばかりの仙人先生、ぐしゃとひしげて、ぴしゃりとのめずる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
朝からの不安と緊張が、並大抵でないことは知っておりますが、それにしても、店中にみなぎる不気味な——押潰おしつぶされたような息苦しい騒ぎは容易のことではありません。
危ないドブ板をむと、奧からは押潰おしつぶされたやうな聲。平次は、さすがにギヨツとして立止ります。
(何しとる、うむ、)と押潰おしつぶすように云います。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)