手摺てす)” の例文
二階の床には円屋根と同じ直径の穴があり、古めかしき手摺てすりがあり、その穴からヨカナアンの首が現れそうな気がした。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
コンクリートの階段と手摺てすりとがあり、階段の上がり口には蘇鉄そてつや寒菊や葉蘭はらんなどの鉢が四つ五つ置いてあった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そして拭き掃除がすんでしまうと、手摺てすりにもたれて、お互いに髪をめ合ったり、くしかんざしの話をしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この壮大な霊廟れいびょうの中央に、その創建者の墓があり、その彫像がきさきの像とならんで、華麗な墓石の上に横たわり、全体は目もあやな細工をした真鍮の手摺てすりでかこんである。
舞台と云うのは、高さ三尺ばかり、幅二間ばかりの金箔きんぱくを押した歩衝ついたてである。Kの説によると、これを「手摺てすり」と称するので、いつでも取壊せるように出来ていると云う。
野呂松人形 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十九にしてはけてるねと旦那どの笑ひ出すに、人の悪るい事を仰しやるとてお力はつて障子を明け、手摺てすりに寄つて頭痛をたたくに、お前はどうする金は欲しくないかと問はれて
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手摺てすりにもたれながら向こう座敷の明るい電気燈やはでな笑い声を湿っぽい空気の中から遠くうかがってつまらない心持ちをつまらないなりに引きずるような態度で、煙草たばこばかり吹かしていた。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今歳ことしきてお客樣きやくさま數多かずおほく、午後ごゞよりとの招待状せうたいじよう一つもむなしうりしはくて、ぐるほどのにぎはひは坐敷ざしきあふれて茶室ちやしつすみのがるゝもあり、二かい手摺てすりに洋服ようふくのお輕女郎かるじよろう
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
O氏は二階の手摺てすり際へ籐椅子とういすを持ち出して、午後からの創作に疲れた頭を安めていたが、本をぎっしり詰め込んだ大きな書棚や、古い装飾品のこてこて飾られた部屋が入りつけている笹村の目には
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ありがたうございますときさらつてくうしろ姿すがた、十九にしてはけてるねと旦那だんなどのわらすに、ひとるいことおつしやるとておりきつて障子しやうじけ、手摺てすりにつて頭痛づつうをたゝくに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女中は廊下の手摺てすりにもたれながらお庄に言って聞かせた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)