あこ)” の例文
こういう女に多少の学問と独立出来る職業を与えたら、虚栄にあこがれる今の女学校出の奥さんよりは遥にまさった立派な女が出来る
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
貴下方あなたがたが、到底対手あいてにゃなるまいと思っておいでなさる、わかい人たちが、かえって祖師そしあこがれてます。どうかして、安心立命あんしんりつめいが得たいともだえてますよ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悲哀に満ちた胸を抱いてほしいままに町へも出られない掟と誡めとに縛られるお屋敷の子は明日にもお鶴が売られて行く遠い下町に限りも知らずあこがれた。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
おれはこの五六日、その不思議な世界にあこがれて、蔦葛つたかづらに掩はれた木々のあひだを、夢現ゆめうつつのやうに歩いてゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は、婦人科の医者の醜悪な一面のみを強調して描いた或る作家志望の女性を戒めて、婦人科医はみんな、夢のなかの女性にあこがれる理想家です、と注意している。
チェーホフの短篇に就いて (新字新仮名) / 神西清(著)
それが芸術家をして巴里の生活をあこがれしめる重大な原因の一つでもあるといっていいかも知れない。
爾来星霜せいそう幾変遷いくへんせんするに従い、自分個人のみにては完全ならざることを悟り、近来真面目に人生を考うるものは、西洋人で東洋にあこがれ、東洋人は西洋をしたう有様にある。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
したくても、ゆるされない。名誉恢復。そんな言葉をかしい? あはれな言葉ね。だけど、あたしたち、いちど、あやまち犯した人たち、どんなに、それにあこがれてゐるか。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
肉体の欲にきて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縦生活の悲愁ここにたたへられ、或は空想の泡沫ほうまつに帰するを哀みて、真理の捉へ難きにあこがるる哲人の愁思もほのめかさる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
この商売の女は、とかく堅気をあこがれるんだが、大抵は飽かれるか、つまらなくなって、元の古巣へ舞い戻って来るのが落ちだよ。悪いことは言わないから、うちにじっとしていな。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
したくても、ゆるされない。名誉恢復。そんな言葉おかしい? あわれな言葉ね。だけど、あたしたち、いちど、あやまち犯した人たち、どんなに、それにあこがれているか。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
人心のあこがれ向ふ高大の理想は神の愛なりといふ中心思想を基として、幾多の傑作あり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
たとへばまぼろしをんな姿すがたあこがるゝのは、おひり、極楽ごくらくのぞむとおなじとる。けれども姿すがたやうには、……ぬま出掛でかけて、手場でばつくばつて、ある刻限こくげんまでたねばならぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
従って寿々廼家の旦那だんなである廻船問屋かいせんどんやの主人のおいであり、この町から出た多くの海員の一人で、中学を出たころすでに南洋にあこがれをいだき、海軍兵学校の入学試験をしくじってから
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しどろの足をねされて、飛行ひぎやうの空にあこがるゝ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しどろの足をねされて、飛行ひぎようの空にあこがるゝ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)