憂世うきよ)” の例文
花鳥風月に遊ぶという事も、俳諧に遊ぶという事も、風月に神を破り花鳥に心を労するということも畢竟憂世うきよを背景にしていうことである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
定めとてもない漂泊の旅に転々として憂世うきよをかこちがちな御面師が、次第に自分の名前にまでも呪咀じゅそを覚えたというのが、漠然ながら私も同感されて見ると
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
公儀の八釜やかましい憂世うきよを三分五厘に洒落しゃれ飛ばし、かみは国政の不満から、しも閨中けいちゅう悶々事もんもんじに到るまで、他愛もなく笑い散らして死中に活あり、活中死あり、枯木に花を咲かせ
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二人でえても離れて心配するよりいいというような泡鳴からの手紙を読むと、想思の人が東西を離れるようになるとは、ほんとに憂世うきよではあるといい、苦労をともにする人は
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
何卒なにとぞ余所よそながらもうけたまはりたく存上候ぞんじあげさふらふは、長々御信おんたよりも無く居らせられ候御前様おんまへさま是迄これまで如何いか御過おんすご被遊候あそばされさふらふや、さぞかしあら憂世うきよの波に一方ひとかたならぬ御艱難ごかんなんあそばし候事と、思ふも可恐おそろしきやうに存上候ぞんじあげさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
親たる父にだ孝の道もつくさずして先だつ不孝は幾重いくえにも済まぬがわたしは一刻も早くこの苦しい憂世うきよを去りたい、わたしの死せるのちはあの夫は、あんな人だから死後の事など何も一切いっせつかまわぬ事でしょう
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
それが氣懸きがゝりゆゑ、おれゃもうけっしてこのやみやかたはなれぬ。そなた侍女こしもと蛆共うじどもと一しょにおれ永久いつまで此處こゝにゐよう。おゝ、いまこゝで永劫安處えいがふあんじょはふさだめ、憂世うきよてたこの肉體からだから薄運ふしあはせくびき振落ふりおとさう。
沖釣の宵の夜ふけの漁火いさりびの繁く遥るけき憂世うきよなるかも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)