慢心まんしん)” の例文
匹夫の出世ほど危ういものはないぞ。ひとのそねみ、あげつらい、みな己れが慢心まんしんすればこそなれ。汝は、中村のむかしを忘るるなよ、主君の御恩を忘却ぼうきゃくいたすまいぞ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗助そうすけには宜道ぎだう意味いみがよくわからなかつた。かれこの生若なまわかあをあたまをしたばうさんのまへつて、あたかも一低能兒ていのうじであるかのごと心持こゝろもちおこした。かれ慢心まんしん京都きやうと以來いらいすで銷磨せうまつくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ呉々くれぐれも妻は己の職業に慢心まんしんして大切にしてもらう夫にれ、かりにも威張いばったり増長ぞうちょうせぬこと。月並のいましめのようなれど、余程よほどの心がけなくてはいわゆる女性のあさはかより、このへいおちいやすかるべし。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それがよくわからないばかりに、兎角とかく人間にんげんはわがままたり、慢心まんしんたりして、んだ過失あやまちをしでかすことにもなりますので……。これはこちらの世界せかい引越ひっこしてると、だんだんわかってまいります。
慢心まんしんさせないようにしようじゃないか!
胸に慢心まんしんのいっぱいな蛾次郎、天狗てんぐの面をかぶったように、鼻たかだかと大見得おおみえをきった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく山の者が久米一の傲慢ごうまん増長ぞうちょうを憎んで、かげ口に増長天王ぞうちょうてんのうと悪口をいっているが、かりそめにも、この大川内で窯焚かまたきの上手じょうずでは右へ出る者のない百助を、足蹴あしげにした憤怒ふんぬ慢心まんしんの今の姿は
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この老爺おやじめ、よくよく芸に慢心まんしんしていやがる」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)