意気地いくぢ)” の例文
旧字:意氣地
小児せうにの如くタワイなく、意気地いくぢなく、湾白わんぱくで、ダヾをこねて、あそずきで、無法むはふで、歿分暁わからずやで、或時あるときはおやま大将たいしやうとなりて空威張からゐばりをし
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
『高柳の話なぞを聞かなければ格別、聞いて、知つて、黙つて帰るといふことは、新平民として余り意気地いくぢが無さ過ぎるからねえ』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
このくらゐのかきの木に登れないやうな、意気地いくぢのない大人なんかに、イザといふ時に何が出来よう、といふやうな気がして来るのでした。
かぶと虫 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
かういふ時に、こんな意気地いくぢのないところを見せてはと、歯を喰ひしばるやうにしても、いつたん緩んだ気持は、もう取り押へやうがなかつた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
(あゝ、意気地いくぢはございませんねえ。足駄あしだでは無理むりでございませう、これとお穿へなさいまし、あれさ、ちやんといふことをくんですよ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の意気地いくぢないことを叱る様な亡母はゝの声が聞えるぢやありませんか、あゝいつそ死んだならば、斯様こんな不愉快な苦境から脱れることが出来ようなどと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「しようがないのね。意気地いくぢがないのね。貴方、可笑しいでせう?」涙顔るいがんを拭きもせずそのまゝで笑つて
時子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
鶴と家鴨とをくらへるが故に、東京市民を獣心なりと云ふは、——いては一切人間を禽獣きんじうと選ぶことなしと云ふは、畢竟ひつきやう意気地いくぢなきセンテイメンタリズムのみ。
そしてとほりがゝりの成るべくきたない車、るべく意気地いくぢのなさゝうな車夫を見付みつけておそる/\
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
けれども相手が何時いつでもあゝるとすると、教育を受けた自分には、あれよりほかに受け様がないとも思はれる。すると無暗に女に近付いてはならないと云ふ訳になる。何だか意気地いくぢがない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、自分ながら意気地いくぢなく、明日からまた気をとり直して、みつしり働かうといふ料簡れうけんになるのであつた。此の料簡は今から二年前、彼が此波止場へ着いた時の心持と稍々やゝ同じ者である。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
田村の奴は俺が内心こんな苦悩をもつてゐると知つてか知らずでか、とにかく、俺を意気地いくぢなしにしてしまつた。首が一つしかないからお前はこはかつたんだらうとほざいた。口惜くやしいが為方しかたがない。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
お前にひもじい思を為せるやうな、そんな意気地いくぢの無い男でもない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「栄ちやん、御免なさいよ、すこし横に成るから——草臥くたびれたやら、眠いやらで。『意気地いくぢが無いね』なんて、兄さんに笑はれちやつた。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あんたは、だれ? え、だれなのさ」……わたくしは、たゞ、さう呻きつゞけました。意気地いくぢのないことでございました。でも、外に、どうしやうもございません。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
奥様おくさん勿体ないこと、奥様の信仰の堅くてらつしやいますことは、良人やど毎々つねづね御噂申上げるので御座いましてネ、お前などはホンとに意気地いくぢが無くてけないツて、貴女
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
唯、私は私の愚を笑ひながら、しかもその愚に恋恋たる私自身の意気地いくぢなさを憐れまずにはゐられないのである。或は私自身と共に意気地ない一般人間をも憐れまずにはゐられないのである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何卒どうかして市村君のものに為て遣りたい。高柳の話なぞを聞かなければ格別、聞いて、知つて、黙つて帰るといふことは、新平民として余り意気地いくぢが無さ過ぎるからねえ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうで御座いますよ、——何ののとかどばつたことは申しますがネ、もう/\女の言ふなり次第なものです、考へて見ると世の中に、男ほど意気地いくぢの無いものは御座いませんのねエ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おやおや、何処が? うそよ、とても意気地いくぢがないのよ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)