ほしい)” の例文
けれどもその一重瞼の中に輝やく瞳子ひとみ漆黒しっこくであった。だから非常によく働らいた。或時は専横せんおうと云ってもいいくらいに表情をほしいままにした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
れば惡は惡にほろぶる事誠に是非もなき次第しだいなりまた主人あるじ五兵衞は其人を知らずたゞ己のよくほしいまゝになせしゆゑ遂には家の滅亡めつばうを招くといふこれまた淺猿あさましき事にこそ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わかときは二はない』としようしてあらゆる肉慾にくよくほしいまゝにせんとする青年男女せいねんだんぢよ自由じいう干渉かんせふるぞ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
実は御子左みこひだり一家のほしいままな思いつきでなく、当時の隠者層を生み出してくる母胎となった、中堅貴紳層の一般的な生活や精神やの中から、根をはやしてえ出たものであった証拠には
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
葉子の頭に描かれた夫人はの強い、情のほしいままな、野心の深い割合に手練タクト露骨ろこつな、良人おっとを軽く見てややともするとかさにかかりながら、それでいて良人から独立する事の到底できない
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我は半ば病めるが如き苦悶を覺えき。姫の姿は驕兒けうじほしいまゝに戲れ狂ふ如く、その聲はいにしへの希臘の祭に出できといふ狂女の歌ふに似たり。されどその放縱の間にも猶やさしく愛らしきところを存せり。
子供と違って大人たいじんは、なまじい一つの物を十筋とすじ二十筋のあやからできたように見窮みきわめる力があるから、生活の基礎となるべき純潔な感情をほしいままに吸収する場合がきわめて少ない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
積善せきぜんの家には餘慶よけいあり積惡せきあくの家には餘殃よあうありとむべなるかな此篇このへんのする所の村井長庵の如きおもて醫術いじゆつわざとし内は佞邪奸惡ねいじやかんあくほしいまゝにしておのれ榮利えいりつくさんとほつす然れども天網てんまういかで此惡漢わるものを通さん其とがめを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)