後光ごこう)” の例文
以前にも小城魚太郎こしろうおたろうは、探偵小説『後光ごこう殺人事件』の中で、精神の激動中に死を発した場合、瞬間強直を起すという理論を扱いました。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
西郷隆盛さいごうたかもりのそばにいると心地ここちよくおう身体からだから後光ごこうでも出ているように人は感じ、おうは近づくとえりを正さねばならぬほど威厳いげんがあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
げかかった山高帽を阿弥陀あみだかぶって毛繻子張けじゅすばりの蝙蝠傘こうもりをさした、一人坊ひとりぼっちの腰弁当の細長い顔から後光ごこうがさした。高柳君ははっと思う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怪物は、まっぱだかで、仁王におうだちになっていました。その全身が、後光ごこうのような光でおおわれているのです。
夜光人間 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また、彼が仕出のときには、牛車のまわりを蜂が金色こんじき後光ごこうになって飛び巡って行く。彼が『帰れ』といえば帰り『止まれ』といえば車のおいひさしに止まった。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
反対はんたいに、ちいさなエチエンヌの清浄無垢せいじょうむくなことは、その薔薇ばらいろのふくらはぎに、後光ごこうのようにあらわれているでしょう。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
温かい手で、すぐ抱き取って、ほおずりをして可愛がる。その面はかがやいて、後光ごこうがさして来るようです。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一八八〇年代(明治十年代)の後期に、日本を現在の軌道にのせた重臣たちが、皇統に、神秘主義の後光ごこうと特権とを、意識的に、情緒ゆたかにあたえたことは、疑う余地がない。
彼女は後光ごこうを背負う仏陀のように、赫灼かくしゃくたる光明にあたりを輝かして立っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
東京のいろは骨牌では、イが「犬も歩けば棒にあたる」であるが、大阪の方では「鰯の頭も信心から」で、絵札には魚の骨から金色の後光ごこうがさし、人々のそれを拝んでいる様が描いてある。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ぼうっと青白く後光ごこうした一つのしまが見えるのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
中でも、ぴかぴか光る宝石の首飾り、腕輪、小箱、王冠などからは、虹のような後光ごこうがさしています。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もしそうだとすれば、これは前の説よりも一層、威権を加えた後光ごこうであります。それを知ってその筋が、内偵の手を引いたのももっともとうなずかれる次第でありました。
「わたしの眼から見ますと、あなたさまのおからだに、あの時、後光ごこうがさしていたようでした」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岐阜からわざわざ本願寺参りに京都まで出て来たついでに、夫婦共この病院に這入はいったなり動かないのもいた。その夫婦ものの室のとこには後光ごこうの射した阿弥陀様あみださまの軸がかけてあった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここらの人はとかくにあらぬことを言い触らす癖があって、後光ごこうがさしたの、菩薩があらわれたのと言う。その矢さきに堂塔などを荘厳そうごんにいたしたら、それに就いて又もや何を言い出すか判らない。
ですから後光ごこうと肩書があって初めて人間が光るので、人間そのものの本質を、泥土の中から光らせるという本当の人間がありません……そこへ行くと日蓮は巨人です
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すると、その醜くゆがんだ顔を、ガラス越しに、まぶしい後光ごこうが照らしつけた。イヤ、この場合、光を恐れる悪魔に取っては、神様の後光とも見える、立並ぶ街燈の電光であった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はつい今まで自分の過去をろくでなしのようになしていたのに、酔ったら急に模様が変って、後光ごこうぎゃくに射すとでも評すべき態度で、気燄きえんき始めた。そうしてそれが大抵は失敗の気燄であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金色の豹は月の光をうけて、キラキラと、後光ごこうがさしているようです。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
市五郎の身体から後光ごこうがさすように見えてしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)