つか)” の例文
もうもう私の増長したのにはあきれて了った、到底とても私のようなしょうの悪い女は奥様につかえないということを御話しなさいましたのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今にして思へば政海の波浪はおのづから高く自からひくく、虚名を貪り俗情にはるゝの人にはさをつかひ、かいを用ゆるのおもしろみあるべきも
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
我にあらはれしかの淑女が、さながら水軍ふなての大將の、ともに立ちへさきに立ちつゝあまたの船につかはるゝ人々を見てこれをはげまし
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いましふ所の如くば、の勝たむこと必ずしからむ。こころねがふは、十年百姓をつかはず、一身の故を以て、万民おほむたからわづらはしいたはらしめむや。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
かれ玖須婆くすばの河一一を逃れ渡りて、針間はりまの國一二に至りまし、その國人名は志自牟しじむが家一三に入りまして、身を隱して、馬甘うまかひ牛甘うしかひつかはえたまひき一四
貴下あなたはほんとに智慧者ちえしゃでいらっしゃるよ。百人足らずの人足を、無銭ただつかってさ。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
善くをさむれども、内には事足る老婢ろうひつかひて、わづかに自炊ならざる男世帯をとこせたいを張りて、なほもおごらず、楽まず、心は昔日きのふの手代にして、趣は失意の書生の如く依然たる変物へんぶつの名を失はでゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)