彫師ほりし)” の例文
「ようござんすとも! 東岳大帝をおまつりしてある岳廟のを手がけるなんざ、彫師ほりし一代のほまれだ、腕ッこき、やりやしょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木材としては、目がつんでいるので、とりわけ版木はんぎよろこばれ、好んで彫師ほりしがこれに刀をあてた。家具にしたとて膚艶はだつやがいい。
樺細工の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
白壁町しろかべちょう春信はるのぶ住居すまいでは、いましも春信はるのぶ彫師ほりしまつろう相手あいてに、今度こんど鶴仙堂かくせんどうからいたおろしをする「鷺娘さぎむすめ」の下絵したえまえにして、しきりに色合いろあわせの相談中そうだんちゅうであったが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
紀州鷲峰山じゆぶせん興国寺の開山法燈国師が八十七歳を迎へた時のことだつた。多くの弟子達は、師家しけの達者なうちにその頂相を残しておきたいものだと思つて、なにがしといふ彫師ほりしにそのことを依頼した。
下絵は当時の著名な書家や画家が描いたようであるが、後にはただ名を借りたものが多いようである。専門の彫師ほりしがあって陰刻いんこくしこれに黒の象嵌ぞうがんを入れた。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まだつが鳴ってもないというのに彫師ほりしの亀吉は、にやにや笑いながら、画室の障子に手をかけた。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おさえたたもとはらって、おせんがからだをひねったその刹那せつな、ひょいと徳太郎とくたろう手首てくびをつかんで、にやりわらったのは、かさもささずに、あたまから桐油とうゆかぶった彫師ほりしまつろうだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
どこかで一ぱいっかけてた、いのまわったしたであろう。こえたしか彫師ほりしまつろうであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「いい若え者が何て意気地いくじのねえ話なんだ。どんな体で責められたか知らねえが、相手はたかが女じゃねえか。女に負けてのめのめ逃げ出して来るなんざ、当時彫師ほりしの名折ンなるぜ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)