広野こうや)” の例文
旧字:廣野
その広野こうやあお着物きものをきて、あたま淡紅色うすべにいろぬのをかけて、かおかくし、しろうまって馬子まごかれながら、とぼとぼとやまほうしてゆくおんながありました。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしていかなる苦しみをなめても、呂宋兵衛をうちとり、小角のれいをなぐさめなければならぬと、毎日広野こうやへでて、武技ぶぎをねり、陣法の工夫くふう他念たねんがなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一時間ばかりすると、夜が白々しらじらと明けていった。心も感情もない人造人間に背負せおわれて、どんどん広野こうやを逃げていく私たちの恰好は、全くすさまじいものに見えた。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
広野こうやが気のつかぬ間に細道に変っていたり、種々様々の魔法の様な設計が施されてあることで、この場合も、森が最も深くなり、旅人の心に云い知れぬ不安がきざし始める頃には、それが却って
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たかやまいただきでも、さびしい広野こうやく一ぽんはなにでもいいから、自分じぶんはなりたいものだとおおせられました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
海に船幽霊ふなゆうれいのあるように、広野こうやの古戦場にも、また時として、武者幽霊むしゃゆうれいのまぼろしが、野末のずえを夜もすがらかけめぐって、草木もれいあるもののごとく、鬼哭啾々きこくしゅうしゅうのそよぎをなし
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほしはまた、毎夜まいよかぎりない、しんとしたゆき広野こうやらしていました。ただるものはしろゆきばかりでした。
ものぐさなきつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、道案内みちあんないに立った咲耶子さくやこは西も東もわからぬ広野こうやを、ただグルグルと引きずりまわすのみなので、一同は、道なき道につかれ、梅雪ばいせつもようやくふしんのまゆをひそめはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、村々むらむらは、白々しろじろとしたゆき広野こうやなかに、くろくかすんでえました。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
(江戸市西北の広野こうや!)
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
広野こうやねむっている遠近おちこち木立こだちは、みんな身震みぶるいをしました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)