トップ
>
嶮峻
>
けんしゅん
ふりがな文庫
“
嶮峻
(
けんしゅん
)” の例文
嶮峻
(
けんしゅん
)
、
高岳
(
こうがく
)
ではないが、丘とよび、小山とよび、低山という程度の起伏の波が、春を
脱
(
ぬ
)
いで、ようやく、木々にほの
紅
(
あか
)
い芽をもっていた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
広東湾の
白堊
(
はくあ
)
の燈台に過去の燈は消えかけて、ハッピーバレーの
嶮峻
(
けんしゅん
)
にかかった満月が年少の同志の死面を照りつけた。
地図に出てくる男女
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
永続的なものを築くには涙と血とで固むるのほかはないと知って、苦難を忍従し晴れやかな
額
(
ひたい
)
をし、未来に通ずる
嶮峻
(
けんしゅん
)
なる
隘路
(
あいろ
)
を進んで行きつつあった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その大きさは五
石
(
こく
)
を盛る
瓶
(
かめ
)
の如くで、これに蔵する蜂蜜はさぞやと察せられたが、何分にも
嶮峻
(
けんしゅん
)
の所にあるので、往来の者はむなしく睨んで行き過ぎるばかりであった。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『紀伊国続風土記』によれば、
牟婁
(
むろ
)
郡の村々には矢倉明神という小祠が多い。たいてい社殿はなく古木または岩を祀る。著者の説にはクラは方言山の
嶮峻
(
けんしゅん
)
なる処を意味す。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
とかく
嶮峻
(
けんしゅん
)
な
隘路
(
あいろ
)
を好んでたどるものと危ぶまれ、生まれ持った直情径行の気分はまた少なからず誤解の種をまいてついには有司にさえ
疑惧
(
ぎぐ
)
の眼を見はらしめるに至った兄は
茶の本:01 はしがき
(新字新仮名)
/
岡倉由三郎
(著)
丁謂もこれに先だつこと一年か二年、明道年間に死んだのであるが、寂照が
平坦
(
へいたん
)
な三十年ばかりの生活をした間に、謂は
嶮峻
(
けんしゅん
)
な世路を歩んで、上ったり下ったりしたのであった。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ここ
嶮峻
(
けんしゅん
)
なる絶壁にて、
勾配
(
こうばい
)
の急なることあたかも一帯の壁に似たり、松杉を以て
点綴
(
てんてつ
)
せる山間の谷なれば、緑樹
長
(
とこしえ
)
に陰をなして、草木が漆黒の色を呈するより、黒壁とは名附くるにて
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、
嶮峻
(
けんしゅん
)
の
隘路
(
あいろ
)
に立つものは
拳石
(
こいし
)
にだも
躓
(
つまず
)
いて直ぐ
千仭
(
せんじん
)
の底に
墜
(
お
)
ちる。人気が落ちて下り坂となった時だから、責むるに足りない
聊
(
いささ
)
かの過失でも取返しの付かない意外な致命傷となったのであろう。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
その坂路の
嶮峻
(
けんしゅん
)
なることはなんとも形容のしようがございません。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
さして高くはないが、俗に“上り十八町”といわれ、胸突き坂の一方道と、
嶮峻
(
けんしゅん
)
な絶壁など、個性きびしい山容だった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金華山
(
きんかざん
)
は登り二十余町、さのみ
嶮峻
(
けんしゅん
)
な山ではない、むしろ美しい青い山である。しかも茫々たる大海のうちに
屹立
(
きつりつ
)
しているので、その眼界はすこぶる
闊
(
ひろ
)
い、眺望雄大と云ってよい。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……しかし背後の山は
嶮峻
(
けんしゅん
)
である。もうそれ以上は高く移せない所へまで、敵の旗は山ぎわに押し詰められていた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
元より彼は、一ノ谷のうしろの
嶮峻
(
けんしゅん
)
は覚悟していた。そこへ向う非常識も弁えていた。けれど彼は、敢えて、常識を無視して、非常識へ突進してきた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし山は
嶮峻
(
けんしゅん
)
でなくそう高くなく、線の
和
(
やわ
)
らかい所に、北陸や信州あたりの山国とちがう平和な明るさがある。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
太子ヶ嶽はさして高い
嶮峻
(
けんしゅん
)
な山ではない。
樫
(
かし
)
、くぬぎ、
欅
(
けやき
)
、もみ、はぜ、などにおおわれている雑木山であった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
きっと、彼が眼をやった前方には、夜気に煙っている疎林の中へ、
嶮峻
(
けんしゅん
)
な鷲ヶ岳が
裾
(
すそ
)
をひいていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
南安は、西は天水郡に
連
(
つら
)
なり、北は安定郡に通じている
嶮峻
(
けんしゅん
)
にあった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「中国の弱兵には、この
嶮峻
(
けんしゅん
)
さえ登ってこられまい」と、
驕
(
おご
)
っていた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この
嶮峻
(
けんしゅん
)
な
山路
(
やまじ
)
の
遠駆
(
とおが
)
けに、
騎馬
(
きば
)
をえらべば
愚
(
おろ
)
かである。人間の足より
難儀
(
なんぎ
)
にきまっているのだ、そうかといって、
徒歩
(
かち
)
なればおそらくわが
早足
(
はやあし
)
の
燕作
(
えんさく
)
をうしろにする足の
持
(
も
)
ち
人
(
て
)
はないわけになる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
谷といい、山といっても、この地方にはさして
嶮峻
(
けんしゅん
)
な所はない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嶮
漢検1級
部首:⼭
16画
峻
漢検準1級
部首:⼭
10画
“嶮峻”で始まる語句
嶮峻巍峨