小止をや)” の例文
丁度梅雨ばいうの時節、幾日となく降りつゞいた雨がふと其日の午後ひるすぎ小止をやみした。の明けたやうに、パツと流れて來る日の光の強さは、もうすつかり夏である。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
平中は耳を側立そばだてた。成程なるほどふと気がついて見れば、不相変あひかはらず小止をやみない雨声うせいと一しよに、御前ごぜんへ詰めてゐた女房たちが局々つぼねつぼねに帰るらしい、人ざわめきが聞えて来る。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
六月の末、もう梅雨つゆにかかつてしよぼ降る雨の鬱陶うつたうしい日が幾日となく續いた。それは或る金曜日の第三時間目で、その日も小止をやみない雨に教室の中は薄暗かつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼の小止をやみなき生のかたはらには、右側にも左側にも、有力な證人が控へて居つたとは云へ。
彼等はのろはれてゐる者のやうに戦々兢々せんせんきようきようとして居た。その上に、ランプの焔がどうした具合か、毎夜、ぽつぽつと小止をやみなく揺れて、どこをどう直して見ても直らなかつた。
ぎたころ一呼吸ひといきかせて、ものおとしづまつたが、すそいて、雷神はたゝがみせながら、赤黒あかぐろまじへたくも虚空そらへ、ひ/\あがつて、のぼ氣勢けはひに、あめが、さあと小止をやみにる。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せうことなしに雨はふる、ふりそそぐ、何時までも何時までも小止をやみなく……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この二三日前からといふもの、村中のありとあらゆる木といふ木が、殆ど小止をやみもなしに落葉しつづけてゐます。もう一週間もしたら、本當にこの小さな村はすつかり裸かになつてしまひさうな位。
七つの手紙:或女友達に (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
風塵しばらく小止をや
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
揺れあがる一つほたる息つかししとどの雨か降り小止をやみたる (六六頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
路をさしはさんだ篠懸すずかけも、ひつそりと黄色い葉を垂らしてゐる。ほのかに霧の懸つてゐるく手の樹々きヾあひだからは、唯、噴水のしぶく音が、百年の昔も変らないやうに、小止をやみないさざめきを送つて来る。
東洋の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
雨は小止をやみ草山なだりさみどりなり日本の村へ一気にすべる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いくさ小止をやみ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
いくさ小止をやみ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)