天際てんさい)” の例文
前夜ぜんやあめはれそら薄雲うすぐも隙間あひまから日影ひかげもれてはるものゝ梅雨つゆどきあらそはれず、天際てんさいおも雨雲あまぐもおほママかさなつてた。汽車きしや御丁寧ごていねい各驛かくえきひろつてゆく。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
バチルスを発見すると否とはさまで吾人の人生に関与する所なしといへども、要するに、問題と秘密とは、図書館の中にあらず、浩蕩かうたう天際てんさいに存せずして
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
紫玉のみはつたには、たしか天際てんさい僻辺へきへんに、美女のに似た、白山はくさんは、白く清く映つたのである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
地平線か水平線のほかは見なれない眼に、いま映るは全く曲線の世界で、濃淡はあっても只一つの蒼い色の曲線が重なり合い、延び合い、眼の下から天際てんさいまで少しもたいらかな地上を見ない。
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
なさいいまだ、いま初日出はつひのでだ』と老人らうじんひつゝ海原うなばらとほながめてるので、若者わかものつれられておきながめました、眞紅しんくそこ黄金色こんじきふくんだ一團球いちだんきういましもなかば天際てんさい躍出をどりいでて
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)