るい)” の例文
旧字:
床几しょうぎを、展望のよい、頃合な所に置かせて、そこから味方の善照寺の砦、中島の砦、鷲津、丸根のるいなどを、地形的に頻りとあんじ顔に
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの人のるいそうと目標にされるような、大女優にして残したかった。こういうのも貞奴の舞台の美を愛惜するからである。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
下に二神あり、一をうつ、一をるいと名づく、並びに葦のさくを執って不祥のを伺い、得ればすなわちこれを殺すと。
彼は是迄これまで一冊の詩集と三冊の旅行記とを出版したがその文章と云い、観察と云い、玄人のるいしていたので
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
首さえなければ、犯人の鑑別がつかず、したがって兄弟や家の者にるいを及ぼさないですむという意味である。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
るいや他の艦が、それと気づいた頃にはおそく、本艇は、白みゆく薄闇をいて、うなりながら驀進ばくしんしていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
やはり鶴屋南北つるやなんぼく以来の焼酎火しょうちゅうびにおいがするようだったら、それは事件そのものに嘘があるせいと云うよりは、むしろ私の申し上げ方が、ポオやホフマンのるいすほど
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
告白型という点で近代作家は狂人のるいしている。
流浪の追憶 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「また直義さまも、孤軍の味方も、箱根の一るいを枕に、立ち腹切るか、斬り死にか、いずれともみな最期の途をえらぶでしょう」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうそのあいだは十幾年になるが、一人として彼女のるいしたものはないではないか。それは誰れでも自信はあるであろう。貞奴に負けるものかとの自負はあっても、他から見るとそうは許されぬ。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
佐々と前田の戦争は、ことしも吉例のように四、五月頃から諸所に兵火をあげ、相互に、一じょうるいを奪いあって、馬蹄ばていにかからぬ田野でんやもなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
連戦十五日のうちに、蜀のるいを踏み破ること七ヵ所、戦って勝ち抜くこと十五度。すでに桃江から三百余里の間に、一兵の敵もないじゃあないか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、敵は官軍の名に誇り、いまや三万におよぶ大兵をようすにいたり、お味方はといえば、からくも箱根山中の一るい二塁にしがみついて、孤軍、必死のふせぎにあたっておりまする
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉は、多芸郡たきごおりの要所に、後日のためのるいを築かせて、十三日、大垣おおがきまで帰った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞達ぶんたつが第二の新手をくりだしておりますから、一そうそれを強めるため、城壁にはさらにるいをかさね、砲石、踏弓ふみゆみ火箭ひや、目つぶし、あらゆる防禦物を揃えて、守備に怠りないことです
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水をふくんだ縄ばたきを持った兵が近くに落ちた火箭ひやをすぐたたき消している。正成は歩いて、ひがし足場の松尾季綱すえつなと、西足場の神宮寺正師じんぐうじまさもろ、そのほかのるいへむかって、初めてこう号令した。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことごとくみな絶好の楯であり壁であり石垣であり塹壕ざんごうでありるいである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰かに、呶鳴りつけられて、あわてて畳のるいかがみこむと
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)