土足どそく)” の例文
ぢいやは御飯ごはんときでも、なんでも、草鞋わらぢばきの土足どそくのまゝで片隅かたすみあしれましたが、夕方ゆふがた仕事しごところから草鞋わらぢをぬぎました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
神慮しんりょをおそれぬばちあたり、土足どそく、はだかの皎刀こうとうを引っさげたまま、酒気しゅきにまかせてバラバラッと八神殿しんでん階段かいだんをのぼりかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「白」と声をかくるより早く、土足どそくで座敷に飛び上り、膝行しっこう匍匐ほふくして、忽ち例の放尿をやって、旧主人に恥をかゝした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ねぢ鉢卷はちまき大萬燈おほまんどうふりたてゝ、あたるがまゝの亂暴狼藉らんぼうらうぜき土足どそく踏込ふみこ傍若無人ぼうじやくぶじんざすかたき正太しようたえねば、何處どこかくした、何處どこげた、さあはぬか、はぬか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
斯様かよう土足どそく裾取すそとりまして、御挨拶失礼さんでござんすが、御免なさんせ、向いましてうえさんと、今度はじめてのお目通りでござんす、自分は相州足柄上秦野かみはたの仁造にぞうの一家
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
脊筋せすぢのあたりを、土足どそくにかけて、ドンとむと、ハツともだえてげたかほ
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まことに他愛のない悪戯いたずらではあるが、たとい影にしても、自分の姿の映っているものを土足どそくで踏みにじられるというのは余り愉快なものではない。それについてこんな話が伝えられている。
影を踏まれた女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
稲妻形いなずまがたについている石段いしだんの道を見まわしても、きれいな朝露あさつゆがたたえられて、人の土足どそくにふみにじられているようすはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おさま! 信長公のぶながこうの家臣が三人ほど、ただいま、ご本堂から土足どそくでこれへかけあがってまいりますぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土足どそくのまま、炉のそばへ来た。そしてひとつかみの柴をべて、その明りに
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)