嚠喨りゅうりょう)” の例文
嚠喨りゅうりょうとして喇笛らてきが吹奏され、まっ先にくる鞍上の人を見れば、これなん劉玄徳。左右なるは、伏龍ふくりゅう孔明、鳳雛ほうすう龐統ほうとうの二重臣と思われた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恰も我々が美妙なる音楽に心を奪われ、物我相忘れ、天地ただ嚠喨りゅうりょうたる一楽声のみなるが如く、この刹那いわゆる真実在が現前している。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
藤左衛門は幾度か気を変えて途中からそうとしましたが、唇は笛の歌口に膠着こうちゃくして、不気味な調べが嚠喨りゅうりょうと高鳴るばかり。
救いのない気持で人はそわそわ歩いている。それなのに、練兵場の方では、いま自棄やけ嚠喨りゅうりょうとして喇叭らっぱが吹奏されていた。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
同時に楽屋の入口に垂れ下っている緑色の揚げ幕の中から、嚠喨りゅうりょうたる音楽のが、静かに……静かに流れ出して来た…………………………………。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして、あけの七時とゆうべの四時に嚠喨りゅうりょうと響き渡る、あの音楽的な鐘声かねのねも、たぶん読者諸君は聴かれたことに思う。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
炎々えんえんと燃えあがった塔上とうじょうの聖火に、おなじく塔上の聖火に立った七人の喇叭手らっぱしゅが、おごそかに吹奏すいそうする嚠喨りゅうりょうたる喇叭の音、その余韻よいんも未だ消えない中、荘重そうちょうに聖歌を合唱し始めた
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
何処で覚えたか下等な人を呼びかけるアメリカ語を使い、口笛を嚠喨りゅうりょうと吹いた。これほどの喧騒も混み合いも新吉がカテリイヌを追い求める心をまぎらわすことは出来なかった。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今、この海の何処どこかで、半身はんしん生温なまぬるい水の上に乗出したトリイトンが嚠喨りゅうりょうと貝殻を吹いている。何処か、この晴れ渡った空の下で、薔薇ばら色の泡からアフロディテが生れかかっている。
そこに古寺があったので、彼はそこに身を忍ばせていると、ある夜、風清く月明らかであるので、彼はやるかたもなき思いを笛に寄せて一曲吹きすさむと、嚠喨りゅうりょうの声は山や谷にひびき渡った。
やがて貝の音が嚠喨りゅうりょうと鳴る。それを合図に四方の陣が俄然がぜん運動を開始した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嚠喨りゅうりょうたるラッパの音を聞いた人々は、にわかに元気をとりもどし始めた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、やっとのことで転げるように文素玉は路地をぬけて黄金大通りへ逃げ出した。丁度その時だった。玄竜が最後の路地を曲ろうとした瞬間に、突然大通りの方から喇叭らっぱの音が嚠喨りゅうりょうと響いて来た。
天馬 (新字新仮名) / 金史良(著)
そこでかれはまたらっぱをふいた、嚠喨りゅうりょうたる音は町中にひびいた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
嚠喨りゅうりょうと、起って響くそのいろ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と——躑躅つつじさきたち高楼こうろうにあたって、万籟ばんらいもねむり、死したようなこの時刻に、嚠喨りゅうりょうとふくふえがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夢が覚めて卓のかたわらまで行って、思わずペンをり上げると、美しい音楽は、頭脳あたまの中で嚠喨りゅうりょうと響いている、——が、ベルリオーズは考えなければならなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
軽旅客機が、ハバノフ大使とガーリン将軍をのせ、爆音高く朝日匂う大空にまいあがり、いずこともなく姿を消すと、それにつづいて飛行島内には、嚠喨りゅうりょうたる喇叭ラッパが、隅から隅までひびきわたった。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ポルカは嚠喨りゅうりょうと鳴り響いた——いや、鳴り響くはずであったが、いきなり音楽は調子はずれの不協和音に混乱させられて、驚き騒ぐ人々の前にその醜い音楽はおわってしまった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
やがて、嚠喨りゅうりょうたる奏楽と共に、盛宴のとばりは開かれた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嚠喨りゅうりょうたる喇叭ラッパが艦上にひびきわたった。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このとき御座船近く用意された船の中から、嚠喨りゅうりょうとして楽の音が起った。幾十人の奏する大管弦楽は、水を渡り蒼空あおぞらに響いて、壮麗雄大、言葉にも尽せぬ情趣をかもし出したのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)