名木めいぼく)” の例文
むかしよりして界隈かいわいでは、通寺町とほりてらまち保善寺ほぜんじ一樹いちじゆ藁店わらだな光照寺くわうせうじ一樹いちじゆ、とともに、三枚振袖みつふりそで絲櫻いとざくら名木めいぼくと、となへられたさうである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お屋敷方でも滅多めったにこんな名木めいぼくは見られますまい。」と種員も今は銜煙管くわえぎせるのまま庭の方へ眼を移したが突然思い出したように
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
みなさんこんないろ/\のわけをおはなししたら、われ/\がおたがひに、いまそだつてゐるすべての老樹ろうじゆ名木めいぼくを、ます/\大事だいじにして
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
蘭燈らんとうの珠の光や名木めいぼくのかそけきにおいが、御簾みすごしにうかがわれる。やんごとないお人の影と向いあって、李師々りししの白い横顔もしゃの中の物みたいだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名代なだい名木めいぼく、日の出、入日はもう枯葉ばかりだが、帰りは多摩川へぬけて、月を見ながら鰻でも喰おうというつもり。
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さあ、今度はたいしたもんだぞ、木質は天竺、檀特山だんどくせんから得ました伽羅きゃら名木めいぼくと来るかな。わが朝は仏縁深重の地とあって、伊勢ノ国阿漕ヶ浦に流れ寄り、夜な夜な発する霊光。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さよう、小名木川おなぎがわの五本松は芭蕉翁ばしょうおうが川上とこの川しもや月の友、と吟じられたほどの絶景ゆえけいたりがたくていたりがたき名木めいぼくでしょう。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
精力的な五十歳がらみのししむらをくるむ紫衣しえ金襴きんらんからは、名木めいぼくの香と人間臭とが一つにじって立ちのぼっている。
各地かくちにのこつてゐる、かういふ老樹ろうじゆ名木めいぼくは、たゞ植物學上しよくぶつがくじようまたは林業上りんぎようじようあるひは、風致ふうちうへからの研究けんきゆう資料しりようとして意味いみがあるばかりでなく、いづれも、數百年すうひやくねんまたは千餘年せんよねんあひだ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
以上いじようほか日本につぽんには各地かくち老樹ろうじゆ名木めいぼくがあつて、一々いち/\あげてかぞへることも出來できません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うるしと、はくと、砂子すなごと、うんげんべりの畳と、すべてが、庶民階級の家には見馴れないものばかりで、きにおう名木めいぼくのかおりが、豪奢ごうしゃに鼻をむせさせてくるし、飼いうぐいすの啼くねがどこかでしきりとする。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)