卿等けいら)” の例文
猟奇のよ、卿等けいらは余りに猟奇者であり過ぎてはならない。この物語こそよきいましめである。猟奇のはて如何いかばかり恐ろしきものであるか。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
予は予が最期さいごに際し、既往三年来、常に予が胸底にわだかまれる、呪ふ可き秘密を告白し、以て卿等けいらの前に予が醜悪なる心事を暴露せんとす。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
象徴派の詩人を目して徒らに神経の鋭きにおごる者なりと非議する評家よ、卿等けいらの神経こそ寧ろ過敏の徴候を呈したらずや。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
さて、残りの読者諸兄姉よ、卿等けいらは、よくぞこの行まで、平然とお残りくだすった。読者中の読者とは、実に卿等のことを指していうのであろう。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夢に蒋侯しょうこう、その伝教さんだいふを遣わして使者の趣をもうさす。曰く、不束ふつつかなる女ども、みだり卿等けいらの栄顧を被る、真に不思議なる御縁の段、祝着に存ずるものなり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
残燈滅して又明らかの希望を以て武術の妙訣みょうけつを感得仕るよう不断精進の所存に御座候えば、卿等けいらわかき後輩も、老生のこのたびの浅慮の覆轍ふくてつをいささか後輪の戒となし給い
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
よこして、『余も卿等けいらの余のラヴのために力を貸せしを謝す。余は初めて恋の物うきを知れり。しかして今はこのラヴの進み進まんを願へり、Physical なしに……』
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
我がなつかしき故山の読者よ、卿等けいらし胸に一点の閑境地ありて、忙中なほ且つ花を花と見、鳥を鳥と聴くの心あらば、来つてこのらちもなき閑天地に我みちのくの流人と語るの風流をいなむなかれ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
こひねがはくば、満天下の妙齢女子、卿等けいら務めて美人たれ。其意そのこゝろの美をいふにあらず、肉と皮との美ならむことを、熱心に、忠実に、汲々きふ/\として勤めて時のなほ足らざるをうらみとせよ。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ついに止みなんか、卿等けいら痴態ちたい
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
たとひこれが閨秀けいしうたるの説明をなしたるのちも、吾人一片のじやうを動かすを得ざるなり。婦人といへどもまた然らむ。卿等けいらは描きたる醜悪の姉妹に対して、よく同情を表し得るか。恐らくは得ざるべし。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卿等けいらの声はまた立たず。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ときに、ことなりけり。三人さんにんおなじくゆめむ、ゆめ蒋侯しやうこう伝教さんだいふつかはして使者ししやおもむきまをさす。いはく、不束ふつゝかなるをんなども、みだり卿等けいら栄顧えいこかふむる、まこと不思議ふしぎなる御縁ごえんだん祝着しうちやくぞんずるものなり
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)