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めいふ
ふりがな文庫
“
冥府
(
めいふ
)” の例文
この人死後三日に
蘇
(
よみがえ
)
り、文帝に申せしは、死して
冥府
(
めいふ
)
に至ると、冥府の王汝武帝に進めし
白団
(
はくだん
)
いくばくぞと問う。彪、何の事か解せず。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
後
(
あと
)
にて聞けば
妾
(
しょう
)
の親愛なる
富井於菟
(
とみいおと
)
女史は、この時
娑婆
(
しゃば
)
にありて妾と同病に
罹
(
かか
)
り、
薬石効
(
やくせきこう
)
なく
遂
(
つい
)
に
冥府
(
めいふ
)
の人となりけるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
はじめ
冥府
(
めいふ
)
へ行った時に、わたしは冥府の王に訴えました。なにぶんにも父母が老年で、わたしがいなくなると困ります。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
都会の
雑沓
(
ざっとう
)
から遠く離れた
武蔵野
(
むさしの
)
の深夜は、
冥府
(
めいふ
)
のように暗く静まり返っていた。音といっては空吹く風、光といっては
瞬
(
またた
)
く星のほかにはない。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
早うこの場を退散して、この二人の帰りを待ち受け、こよいの中に
冥府
(
めいふ
)
に送りつかわそう。どれ、その支度にかかろうか?
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
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(
はさ
)
む左右の柳は、一本ごとに緑りをこめて
濛々
(
もうもう
)
と烟る。
娑婆
(
しゃば
)
と
冥府
(
めいふ
)
の
界
(
さかい
)
に立ちて迷える人のあらば、その人の霊を並べたるがこの
気色
(
けしき
)
である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ぜひとも父君がまだ
冥府
(
めいふ
)
の道をさまよっておいでになるうちに自分も行って、同じ所へまいりたいと思うのであった。阿闍梨は多く語らずに座を立って行った。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
既に今も、新九郎の一命を乗せて、怖ろしい
蜘蛛手
(
くもで
)
かがりの駕は、
冥府
(
めいふ
)
の門へ息杖を振り込んで行く——
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あらゆる感覚は
冥府
(
めいふ
)
へ落ちる霊魂のように、狂おしい急激な下降のなかに
嚥
(
の
)
みこまれるように思われた。そのあとはただ、沈黙と、静止と、夜とが、宇宙全体であった。
落穴と振子
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
天堂、
冥府
(
めいふ
)
等の問題に至りては、道理上不可知に属すべきものなれば、これを虚妄なりと断定す。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
それはナイル河底の
冥府
(
めいふ
)
の法廷で、今から一千九百六十五年前に、記録係のトートの神が読上げた、神秘的な、
薄嗄
(
うすが
)
れた声が大空の涯から引返して来た旋律に相違なかった。
髪切虫
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お前と
矢並
(
やなみ
)
行方の不貞不信は許し難いが、夫の死後の行跡には
冥府
(
めいふ
)
の怨みも
酬
(
むく
)
ゆる由はない。
銭形平次捕物控:203 死人の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
たとえきみがわたしの所持金に目をつけて、うしろからかいでひとなぐりして、わたしを
冥府
(
めいふ
)
へ送ったとしても、やっぱりきみはじょうずにこいで行ったことになるのだろう。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
加野は、いまはもはや
冥府
(
めいふ
)
の人になつてしまつたけれども、生きて病床にある時も、富岡は一度も逢ひに行つてはやらなかつた。和解しないままで、加野は淋しく死んで行つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
業病、
冥府
(
めいふ
)
、
変化
(
へんげ
)
の類が随所に跳梁する薄気味の悪い仇うち物であった。
仇討たれ戯作
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
冥府
(
めいふ
)
。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
不孝者め! 心弱い、
愚
(
おろ
)
か者め! 誓いを忘れたか! この父親の
冥府
(
めいふ
)
の苦しみを忘れたか! 浮かばれぬのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「されば、
閻王
(
えんおう
)
の旨により、太師を
冥府
(
めいふ
)
へ送らんとて、はや迎えに参っているものとおぼえたりっ」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(19)Laverna ——たぶん
冥府
(
めいふ
)
の神の一人であったろうと言われているローマの女神。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
その頃はもう月の出が遲く、誰が何處に居るやら、顏の見分けも覺束ないくらゐ、その中を平次の聲だけが、不氣味に
明瞭
(
めいれう
)
に、さながら
冥府
(
めいふ
)
の判官のやうに響き渡るのです。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
もう一度、呼び戻す事の出来ない、過去の
冥府
(
めいふ
)
の底へかき消えてしまつたのだ。貧弱な生活しか知らない日本人の自分にとつては、あの背景の豪華さは、何とも素晴しいものであつたのだ。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
瞳
(
ひとみ
)
はいつか闇になれたが、道は
暗々
(
あんあん
)
として行く手もしれない。
冥府
(
めいふ
)
へかよう
奈落
(
ならく
)
の道をいくような気味わるさ。ポトリ、ポトリと
襟
(
えり
)
もとに落ちてくる
雫
(
しずく
)
のつめたいこと。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次はそれに構はず、
冥府
(
めいふ
)
の判官のやうに、冷たく、靜かに續けました。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
奸
(
よこ
)
しまの人々の
陥穽
(
おとしあな
)
に陥り、生きながら、怨念の鬼となり、
冥府
(
めいふ
)
に下って、小やみもなく、修羅の炎に焼かれての、この苦しみ——おのれ、この怨み、やわか、晴らさで置こうや! 三郎兵衛
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
冥府
(
めいふ
)
へ、自分だけの乗つた汽車は、走り去らうとしてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
(6)ギリシャ神話の
冥府
(
めいふ
)
にある燃ゆる炎の河。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
平次はそれに構わず、
冥府
(
めいふ
)
の判官のように、冷たく、静かに続けました。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蜘蛛手縢
(
くもでかが
)
り
冥府
(
めいふ
)
の
駕
(
かご
)
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
冥府
(
めいふ
)
の王の名。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
真夜中の墓場から抜け出した骸骨の群れは、
冥府
(
めいふ
)
の青白い灯を掲げ、その骨と骨を鳴らし乍ら夜と共に踊り狂う様は、サン・サーンの驚く
可
(
べ
)
き技巧で、存分過ぎるほど丁寧に描き出されて居るのです。
死の舞踏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“冥府”の意味
《名詞》
冥府(めいふ)
あの世。冥土。黄泉路。
地獄。
(出典:Wiktionary)
冥
常用漢字
中学
部首:⼍
10画
府
常用漢字
小4
部首:⼴
8画
“冥”で始まる語句
冥加
冥利
冥途
冥土
冥々
冥福
冥
冥想
冥護
冥罰