“八卦(はっけ)” の例文
青州の野についてみると、賊数万の軍は、すべて黄の旗と、八卦(はっけ)の文を証(しるし)とした幡(はん)をかざして、その勢い、天日をも侮(あなど)っていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少し八卦(はっけ)を置いてみようか、——さよう、——まず御金蔵のすぐ傍(そば)だ、土に縁があって、石に縁があって、水に縁があるかな。
人相、家相、八卦(はっけ)、方位、日の吉凶なども、東京人が最も信仰しているようだ。また、御鬮(みくじ)などもなかなか滑稽(こっけい)である。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
仔細(しさい)は固(もと)より分らぬ。この男とこの女の、互に語る言葉の影から、時々に覗(のぞ)き込んで、いらざる臆測(おくそく)に、うやむやなる恋の八卦(はっけ)をひそかに占(うら)なうばかりである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この千変万化を八卦(はっけ)に画(かく)し、八卦を分てば六十四、六十四の卦は結局、陰陽の二元に、陰陽の二元は太極(たいきょく)の一元に納まる、というのが易の本来だと承りました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしむかしから当るも八卦(はっけ)、当らぬも八卦という事がありますから、凶の卦(け)に当ってもあまりお気におかけなさらん方がよいです。お年はおいくつでいらっしゃいます。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「へえ、悪うござんしたね。蛸坊主め、気どっていやがら。だけど、和尚さん、八卦(はっけ)かなんか立てゝ下さいな。あの野郎の襟クビふんづかまえて、蹴ッぽらかしてくれるから」
行雲流水 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
農民四、五(驚嘆(きょうたん)す)この人ぁ医者ばかりだなぃ。八卦(はっけ)も置ぐようだじゃ。
植物医師:郷土喜劇 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私も、今年か、来年ぐらいまでしかない命だと八卦(はっけ)に占われたときから今日まで気にしてきましたけれど、でも、まだ元気で生きておりますもの。私の毎日々々、それは全く死との闘いでした。
わしの八卦(はっけ)、観相は、天地を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
諺(ことわざ)に、「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」と申しておるが、十中にて五分はあたり、五分は外れるのが当たり前である。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この八卦(はっけ)は間違いもなく当るよ。——お松と仲の良い男はいったい誰なんだ。お松が命にかけてもかばってやろうというのは——八五郎を除いてだよ
地平線の彼方から、真黒に野を捲いてきた大軍は、穣山を距(さ)ること二、三里、一夜に陣を八卦(はっけ)の象(かたち)に備えていた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この不決断を逃(のが)れなければという口実の下(もと)に、彼は暗(あん)に自分の物数奇(ものずき)に媚(こ)びようとした。そうして自分の未来を売卜者(うらないしゃ)の八卦(はっけ)に訴えて判断して見る気になった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そもそも愚老の易断(えきだん)は、下世話(げせわ)に申す当るも八卦(はっけ)当らぬも八卦の看板通り、世間の八卦見のようにきっと当ると保証も致さぬ代り、きっと外(はず)れると請合(うけあ)いも致さぬ。
諺(ことわざ)に「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」と申しておるが、十中にて五分はあたり、五分は外れるのが当たり前である。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
竹の柱に、八卦(はっけ)の乾坤(けんこん)を書いた布の囲い、暗い川風にうごいていた。筮竹(ぜいちく)の前に、易者の姿は見えなかった。——覗(のぞ)き込んで、ちょっと清吉がぼんやりしていると
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし御隠しなさる訳もないでしょう」と鼻子も少々喧嘩腰になる。迷亭は双方の間に坐って、銀煙管(ぎんぎせる)を軍配団扇(ぐんばいうちわ)のように持って、心の裡(うち)で八卦(はっけ)よいやよいやと怒鳴っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まア、見付けてからの事だ。この八卦(はっけ)は当らないかも知れないから」
ゆえに、およそ卜筮によりて未来を前知するは、偶然の暗合、すなわち俗にいう「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
朱い盔(かぶと)、朱地金襴(きんらん)の戦袍(せんぽう)、朱柄(あかえ)の槍、朱い幟旗(しき)を揃えて、八卦(はっけ)の吉瑞(きちずい)にかたどって陣列を立て、その中央に、大将曹操をかこんで、一鼓(こ)六足(そく)、大地を踏み鳴らして入城した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悲しい事に力学と云う意味がわからんので落ちつきかねている。しかしこれしきの事を尋ねては金田夫人の面目に関すると思ってか、ただ相手の顔色で八卦(はっけ)を立てて見る。主人の顔は渋い。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ね、親分、八卦(はっけ)や人相見なんて、本当に当るんでしょうか」
八卦(はっけ)の筮法とともにわが国に行わるるものは五行(ごぎょう)の占法である。例えば、十干、十二支にて人の性質を判断するがごときは、五行の占法と申すものじゃ。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
黄色な布に黒で八卦(はっけ)を画(か)いた中軍旗も、すぐさま彼の騎馬に先んじて進められた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「解らねエよ、八卦(はっけ)の方はまだ修業中だ」
その他、八卦(はっけ)、方位もシナが本元であるからなかなか盛んだが、縁起、御幣(ごへい)かつぎもシナが本場といってよい。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「ちょいと八卦(はっけ)でも置いて来るよ」
いわゆる「当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦」の部類なり。しからば、これまた偶然の暗合というよりほかなし。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「へッ、当るも八卦(はっけ)という奴で」
その中にて最も古く、より広く用いらるるは易の筮法(ぜいほう)である。これを八卦(はっけ)の占いという。そのほかにシナにては亀卜(きぼく)の法があるも、わが国にては今日これを用うるものはない。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「医者か、八卦(はっけ)か、法印(ほういん)か——」
「ヘエ——、八卦(はっけ)みたいだね」
「八卦(はっけ)だよ、八」