伊達者だてしゃ)” の例文
わざと帽子を阿弥陀あみだにかぶったり、白いマフラーを伊達者だてしゃらしくまとえば纏うほど、泥臭く野暮に見えた。遠くから見ている私の方をむいて
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
(その時私は、いかに自分の手際てぎわが鮮やかで、巴里パリ伊達者だてしゃがやる以上に、スマートで上品な挙動にかなつたかを、自分で意識して得意でゐた。)
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
彼女たちは幕府のころ、上野の宮の御用達をつとめた家の愛娘であった。下谷したや一番の伊達者だてしゃ——その唄は彼女の娘時代にあてはめる事が出来る。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
主人の源吉は三十そこそこ、歌舞伎役者にもないといわれた男振りと、蔵前の大通だいつう達を圧倒する派手好きで、その頃江戸中に響いた伊達者だてしゃでした。
また、彼の身に着けている小袖も、常のごつごつした地味なものとは違い、伊達者だてしゃの好みそうな大柄の着物を着ていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
衣服が変わると、わたしの皮膚の色まで変わって、わずか十分というあいだに相当の伊達者だてしゃのようになったのです。
この煙管きせるを手に入れたのは、思えば、ちょっと、自分にはにかむほど昔のことであった。わかい武士の血が、他方では、見栄みえに苦労する伊達者だてしゃとしてあらわれていたのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そのマホー(スペインの伊達者だてしゃ)をめかしやと言い、そのトランステヴェレノ(ローマのチベル彼岸の民)を郭外人と言い、そのハンマル(インドの籠舁かごかき)を市場人足と言い
一列目には幕あき前のひと時を、土地の伊達者だてしゃ連中が両手をうしろへまわして立っていた。
ほとんど破産にひんしたいち騎兵大佐きへいたいさにすぎず、母よりも六つも年下であるばかりか、その性格も冷やかで、弱気で優柔ゆうじゅうで、おまけにすこぶる女好きな伊達者だてしゃであったと伝えられています。
「はつ恋」解説 (新字新仮名) / 神西清(著)
男になるには金がいる、金のなる木を持っていない限り、ちっとやそっとの知行と財産があったからとて、続くものではない。その点は自給自足の道が立たない限り、伊達者だてしゃは通らぬ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
納戸なんどへ入って、戸棚から持出した風呂敷包ふろしきづつみが、その錦絵にしきえで、国貞くにさだの画が二百余枚、虫干むしぼしの時、雛祭ひなまつり、秋の長夜ながよのおりおりごとに、馴染なじみ姉様あねさま三千で、下谷したや伊達者だてしゃ深川ふかがわ婀娜者あだもの沢山たんといる。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「気どり屋、伊達者だてしゃ、名医先生」ピカ一が後姿へ蛮声をあびせた。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
色街でも引く手は数多あまた伊達者だてしゃではいらっしゃるし、お金はあり余るうえ、おまけに、女には人いちばい、お眼がえているんだから、めったに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事実伊達者だてしゃつうすいといわれる人達の内部生活が、思いの外に貧しいのを、平次はマザマザと見せつけられたような気がして、これ以上追及する気もなくなってしまいました。
下谷したや一番伊達者だてしゃでござる。)
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「木戸の蝶番ちょうつがいに油をして、てに音の出ないようにした奴だ。——その油は、日本橋の通三丁目で売っている、伊達者だてしゃの使う伽羅油きゃらゆだ。八、ここにいる人間の頭を嗅いで見ろ」
「これはまた伊達者だてしゃに見える。若先生、いちだんと風流姿でございますぞ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふうむ……たいそう伊達者だてしゃだな、だが、弱くはなさそうだ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊達者だてしゃの中にまた一倍の伊達者が加わった」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)