二片ふたひら)” の例文
もし枝葉に置く霜の影に透したらんに、細いかいなに袖からみ、乳乱れ、つま流れて、白脛しらはぎはその二片ふたひらの布をながれ掻絞かきしぼられていたかも知れない。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さながら人なき家の如く堅くも表口の障子を閉めてしまった土弓場の軒端のきばには折々時ならぬ病葉わくらば一片ひとひら二片ふたひらひらめき落ちるのが殊更にあわれ深く
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貫一はそのなかばを尽して、いこへり。林檎をきゐるお静は、手早く二片ふたひらばかりぎて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
詩集の表紙の上に散った二片ふたひらくれないも眺めた。紅に誘われて、右のかどに在るべき色硝子の一輪挿も眺めようとした。一輪挿はどこかへ行ってあらぬ。一昨日おととい挿した椿つばきは影も形もない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一片ひとひら 二片ふたひら 三片みひら……
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
二片ふたひらの木なれど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
二つ三つまた五つ、さきは白く立って、却って檐前のきさきを舞う雪の二片ふたひら三片みひらが、薄紅うすくれないの蝶にひるがえって、ほんのりと、娘のまぶたを暖めるように見える。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひのきがある。へいがある。むこうに二階がある。乾きかけた庭に雨傘がしてある。じゃの目の黒いふち落花らっか二片ふたひらへばりついている。その他いろいろある。ことごとく無意義にある。みんな器械的である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かる黒髪くろかみそよがしにかぜもなしに、そらなるさくらが、はら/\とつたが、とりかぬしづかさに、花片はなびらおとがする……一片ひとひら……二片ふたひら……三片みひら……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とはらりと落すと、袖で受けたが、さらりと音して、縮緬ちりめんの緋のしぼは、鱗が鳴るか、と地にすべって、潰島田の人形は二片ふたひら三片花をちらして、枝も折れず、柳の葉末に手にとまんぬ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)