下知げじ)” の例文
時に加納郷左衞門、尾關忠兵衞兩士領主の下知げじに應じて召連鳥取に入(伯耆民談。然れども此事後に見る事なし。如何なるるやらん。)
他計甚麽(竹島)雑誌 (旧字旧仮名) / 松浦武四郎(著)
それにひきかえ、領下の百姓老幼までが、正成の下知げじに従って、ともあれ必死に働いてくれておるのは、何と、あわれな者ではないか。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
護送役人の下知げじに従いまして、遠島の罪人一同上陸致しますると、図らずも彼方あなたに当りパッパッと砂煙すなけむり蹴立けたって数多あまたの人が逃げて参ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
青筋たてた悪鬼のような主人の下知げじに、早速家来たちは僧の後を追い駈けましたが、骨強い、おまけに反感を持って、頭のおかしくなっているこの僧が
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
手を分けてそれぞれ下知げじを伝えた。それを済ましたころにはもう昼時刻だ。物頭が樋橋といはしまで峠を降りて昼飯をしたためていると、追い追いと人足も集まって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
行親 一人はこれより川下へ走せ向うて、村の出口に控えたる者どもに、即刻かかれと下知げじを伝えい。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吉野の下知げじに、武士共は離れ座敷へ駆けつけて、泣き叫ぶ小みどりを、厳しく括り上げたのである。
純情狸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
とお丹の下知げじに、おおかみころもまとい、きつねくらい、たぬきは飲み、ふくろう謡えば、烏は躍り、百足むかでくちなわ、畳を這い、いたち鼯鼠むささび廊下を走り、縦横交馳こうち、乱暴狼藉ろうぜき、あわれ六六館の楼上は魑魅魍魎ちみもうりょう横奪おうだつされて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
変異を聞いて縁に立ちいでた鉄斎、サッと顔色をかえて下知げじをくだす。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其声それよりでかき声をいだして馬鹿めとののしりながら為右衛門ずかずかと立ち出で、僮僕おとこどもこの狂漢きちがいを門外に引きいだせ、騒々しきを嫌いたまう上人様に知れなば、我らがこやつのために叱らるべしとの下知げじ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
第三、柴田外記どのが奏者下知げじを間違えられたのか。
それっ!という斜酣の下知げじだ。重い真綿をくわえているのだが、蜂は随分速い。五人は白い真綿の玉を追って大根畑と小麦畑の畔を夢中になって走った。走った走った。
採峰徘菌愚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
このため、勘定奉行の荻原近江守は、八州の代官に下知げじして、たか百石について一石ずつの犬扶持いぬぶちを課し、江戸の町民へは、一町ごとに、玄米くろごめ五斗六升の割で、徴発を令した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜明けの河水にひたされて、鎧の下着も凍えつらん、者ども、諸所に火をけ、大焚火おおたきびをあげよ。——小楠公はそう下知げじされた。救いあげた捕虜たちを、まずぬくもらせてやったのだ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「元々、わが殿には、おこりと申すご持病があったのです。とは申せ、鎌倉どののお下知げじでした。そのムリを押してのご出陣でしたので、この山間の冷えやら湿しつやらの不養生には耐え難く」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一の手は、甲賀坊。——二の手、三の手、みな抜かるな」と、下知げじした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)