三毛みけ)” の例文
如何どうなったのだろう? 烏山の天狗犬てんぐいぬまれたのかも知れぬ。三毛みけは美しい小猫だったから、或は人にいて往かれたかも知れぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「アオン、アオンといっているだろう。あれは、くろいどらねこだよ。そして、ニャア、ニャアといっているのは、三毛みけなんだよ。」
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
乃公は忠公のうち三毛みけを借りて森川さんのところへ行った。此猫は雌で鼻黒だから鼠を捕るのが上手だ。此の間なんか近所の鶏さえ取った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三毛みけ」に交際を求めて来る男猫おとこねこが数匹ある中に、額に白斑しろぶちのある黒猫で、からだの小さいくせに恐ろしく慓悍ひょうかんなのがいる。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
よっぽど古いお話なんで御座ございますよ。私の祖父じじいの子供の時分に居りました、「さん」という猫なんで御座ございます。三毛みけだったんで御座ございますって。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
車屋の黒のように横丁の肴屋さかなやまで遠征をする気力はないし、新道しんみち二絃琴にげんきんの師匠のとこ三毛みけのように贅沢ぜいたくは無論云える身分でない。従って存外きらいは少ない方だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私の家には、祖母の代から飼いはじめたという三毛みけ雌猫めねこがおりました。可なりに大きな身体をしていましたが、この三毛を先妻はわが子のように可愛がりました。
猫と村正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
けれどもおふれが出て、ねこつながとけますと、方々ほうぼう三毛みけも、ぶちも、くろも、しろ自由じゆうになったので、それこそ大喜おおよろこびで、みやこ町中まちじゅうをおもしろ半分はんぶんかけまわりました。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
半七老人の家には小さい三毛みけ猫が飼ってあった。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しょうちゃんは、ねこのけんかでをさましたのでした。ちいさい三毛みけが、おおきなくろねこにいじめられているので、たいへんだとおもったのです。
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
二匹というのは雌の「三毛みけ」と雄の「たま」とである。三毛は去年の春生まれで、玉のほうは二三か月おそく生まれた。
子猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
また隣りの三毛みけ君などは人間が所有権という事を解していないといっておおいに憤慨している。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しょうちゃんは、おとこなかで、しばらくくろねこと三毛みけねこのけんかをきいていましたが、我慢がまんがしきれなくなって
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分は病気療養のためしばらく滞在するつもりだから、階下の七番と札のついた小さい室を借りていた。ちょっとした庭を控えて、庭と桑畑との境の船板塀には、宿の三毛みけが来てよく昼眠ひるねをする。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
きみらない。なが三毛みけねこだ。はとがあそびからかえって、はこのトラップへはいるのをていたのだね。あとからついてはいって、二ともべてしまったのさ。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
小さい時分は一家じゅうの寵児ちょうじである「三毛みけ」の遊戯の相手としての「道化師クラウン」として存在の意義を認められていたのが、三毛も玉も年を取って、もうそう活発な遊戯を演ずる事がなくなってからは
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三毛みけのお墓に花が散る
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)