一振ひとふ)” の例文
金太郎きんたろうはおしまいにじれったくなって、からだを一振ひとふりうんとりますと、うさぎもさる鹿しかくまもみんないっぺんにごろごろ、ごろごろ土俵どひょうそとにころげしてしまいました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
老人ろうじんは王子の手を取って、つえ一振ひとふったかと思うと、二人はもう高いかべの上にあがっていました。王子はびっくりしました。この老人ろうじん魔法使まほうつかいにちがいない、と思いました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
べう、十べう大叫喚だいけうくわん、あはや、稻妻いなづま喰伏くひふせられたとおもつたが、このいぬ尋常じんじやうでない、たちまちむつくときて、をりからをどかゝ一頭いつとう雄獅をじゝ咽元のどもと噛付くひついて、一振ひとふるよとへたが
其から伯爵のかんざしを抜いて、意気込んで一振ひとふり振ると、……黒髪のさっさばけたのが烏帽子のきん裏透うらすいて、宛然さながら金屏風きんびょうぶに名誉の絵師の、松風をすみで流したやうで、雲も竜も其処そこからくか
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
豊かな捲髪まきげ一振ひとふりして、「くだらない」と言うだけで、けろりとしていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
やさしくまねいて、みごとな陣太刀じんだち一振ひとふりを清兵衛にあたえた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
董卓からは、感状と剣一振ひとふりとが直ちに届けられてきた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両手をかたくかたくにぎりしめ、それをまずくちびるへ、それから額へ持っていったが——そこで、突然ぱっと指をひろげると、両の耳からかみの毛をはらいのけ、さっと一振ひとふり髪を振上げたかと思うと
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「じゃ、いいわ、いらしても」と彼女は、無造作に手を一振ひとふりして言った。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)