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びしよく
翠色したヽる
松にまじりて
紅葉のあるお
邸と
問へば、
中の
橋のはし
板とヾろくばかり、
扨も
人の
知るは
夫のみならで、
一重と
呼ばるヽ
令孃の
美色
浮世に
鏡といふ
物のなくば、
我が
妍きも
醜きも
知らで、
分に
安じたる
思ひ、九
尺二
間に
楊貴妃小町を
隱くして、
美色の
前だれ
掛奧床しうて
過ぎぬべし
寐屋の
燈火またヽく
影もあはれ
淋しや
丁字頭の、
花と
呼ばれし
香山家の
姫、
今の
子爵と
同じ
腹に、
双玉の
稱へは
美色に
勝を
占めしが、さりとて
兄君に
席を
越えず
さらば
噂さも
嘘にはあらず、
嘘どころか
聞きしよりは
十倍も
二十倍も
美し、さても、
其色の
尋常を
越えなば、
土に
根生ひのばらの
花さへ、
絹帽に
挾まれたしと
願ふならひを、
彼の
美色にて
何故ならん
と、格子の外へ顏を出した、申分ない
媚色のお咲を、平次はピタリと指すのです。