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しやだい
渡す
人知りし
顏の
女中ならば
何とせん
詞がけられなば
何といはん
恥の
上塗りは
要なきことなり
車代といふも
知れたもの
受けずともよし
此まゝに
歸らんか
否是れ
欲しければこそ
雪の
夜を
今の
客人の
氣の
長さまだ
車代くれんともせず
何時まで
待たする
心にやさりとてまさかに
促りもされまじ
何としたものぞとさし
覗く
奧の
方廊下を
歩む
足音にも
面赫と
熱くなりて
我知らず
又蔭に
入る
思へば
待たるゝやうな
待たれぬやうな
萬一車代を
今一個の
人あり、
車臺に
坐して、
右手に
柄子を
握つて
旋廻輪を
廻しつゝ、
徐々に
足下の
踏臺を
踏むと
忽ち
傍に
備へられたる
號鈴器はリン/\と
鳴り
出して、
下方の
軸盤の
靜かに
回轉を
始むると
共に