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かずし
折から
貸ボート
屋の
桟橋には
舷に
数知れず
提燈を
下げた
凉船が
間もなく
纜を
解いて
出やうとするところらしく、
客を
呼込む
女の
声が一
層甲高に
すわ、なにかことこそはじまったぞ! とそれへ
加えて、
上杉家、
北条家、
前田家、
伊達家、そのほかの
溜り
場からも
数知れない
剣士たちがかけあつまってくる。
猛狒や、
獅子や、
虎の
類が
數知れず
棲んで
居つて、
私の
樣な
無鐵砲な
人間でも、とても
恐ろしくつて
行けぬ
程だから、
誰人だつて
足踏は
出來ませない。
遠き
島は
近く
見え、
近き
船は
却て
遠く
見え、
其爲に
數知れず
不測の
禍を
釀して、
此洋中に
難破せる
沈沒船の
船體は
既に
海底に
朽ちて、
名殘の
檣頭のみ
波間に
隱見せる
其物凄き
光景を
吊ひつゝ