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あがりば
と
揚場から
奧方が
聲を
懸ける。
一寸斷つて
置くが、
此の
方は
裸體でない。
衣紋正しくと
云つた
風で、
朝からの
厚化粧、
威儀備はつたものである。
たとひ
紋着で
袴を
穿いても、これが
反對で、
女湯の
揚場に、
待つ
方が
旦と
成ると、
時節柄、
早速其の
筋から
御沙汰があるが、
男湯へ
女の
出入は、
三馬以來大目に
見てある。
それ
熱ければ
梅、ぬるければ
竹、
客を
松の
湯の
揚場に、
奧方はお
定りの
廂髮。
大島擬ひのお
羽織で、
旦那が
藻脱の
籠の
傍に、
小兒の
衣服の
紅い
裏を、
膝を
飜して
控へて
居る。
こう呟いて勘次が振り返った時、藤吉はもう
上場に仁王立ちに起って、釘抜と異名を取った
彎曲った脚をそそくさと拭いていた。