ちが)” の例文
しかるに、不思議ふしぎなことには、むらに二つ時計とけいがありましたが、どうしたことか、二つの時計とけいやく三十ぷんばかり時間じかんちがっていました。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも夏はそれほどひどくは気にならないけれど冬羽織着物、下着、半衿とあんまりちがう色をつかうのは千世子はいて居なかった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
片口は無いと見えて山形に五の字のかれた一升徳利いっしょうどくりは火鉢の横に侍坐じざせしめられ、駕籠屋かごやの腕と云っては時代ちがいの見立となれど
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
達二たつじは早く、おじいさんの所へもどろうとしていそいで引っかえしました。けれどもどうも、それは前に来た所とはちがっていたようでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ばかな六部ろくぶめ。よけいなところへして、かみさまのおばつをうけたにちがいない。そのたたりがむらにかかってこなければいいが。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
さて、三ねんまへ、……ちがひます。なれども、おな霜月しもつきさり、ちやうおないま時刻じこくわれらにもお前樣まへさまおなことがありました。……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すると良人おっとわたくし意見いけんちがいまして、それはあま面白おもしろくない、是非ぜひ若月わかつき』にせよとって、なんもうしてもれないのです。
「もう何時なんじ」とひながら、枕元まくらもと宗助そうすけ見上みあげた。よひとはちがつてほゝから退いて、洋燈らんぷらされたところが、ことに蒼白あをじろうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大學者だいがくしやさまがつむりうへから大聲おほごゑ異見いけんをしてくださるとはちがふて、しんからそこからすほどのなみだがこぼれて、いかに強情がうじやうまんのわたしでも
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぼくはそのかおながめた時、おもわず「ずいぶんやせましたね」といった。この言葉ことばはもちろん滝田くん不快ふかいあたえたのにちがいなかった。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この人もきっと会社の人で、上役が旅行をするのを見送りに来たのにちがいない。これはこの二人の風采ふうさいや態度を見くらべてもよくわかる。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
「お父さんちがうよ。お父さんはまだ六兵衛さんのえらいことを知らないんだ。六兵衛さんはうらないにかけては日本一なんだよ。」
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
これならばひめるにちがひない、きっと自分じぶんひめのお婿むこさんになれるだらうなどゝかんがへて、おほめかしにめかしんでかけました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
『ナニ、くじくとふのか』公爵夫人こうしやくふじんあいちんやが、地軸ちゞくつたのをくじくとちがへて、『むすめあたま捩斷ちぎつてしまへ』とひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
成程小野は頑固な人にちがいない、けれども私の不従順と云うことも十分であるから、始終しじゅう嫌われたのはもっと至極しごく、少しもうらむ所はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よび右の話をなしたるに上方の衆は關東者とちがねんいれ候へば物をかたくする心ならんとて松葉屋桐屋共に立出たちいで對面たいめんに及びしかば大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし將來このさきこれをさいはひであつたとときいへども、たしかに不幸ふかうであるとかんずるにちがいない。ぼくらないでい、かんじたくないものだ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とにかくそのはじめは切じつな人間生くわつ慰樂いらくとしてあそびとしてつくり成された將棋せうきちがひないとおもふが、それを慰樂いらくあそびのいきを遙にえて
斯くて鳥の地に落ちたる時は、捕鳥者は直ちに其塲にけ獲物をおさひもくなり。石鏃とちがひて此道具は幾度にても用ゐる事を得。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
行きは、よいよい帰りはこわい、と子供のころうたう童謡どうようがあります。あの歌のように人生、行きと帰りとではずいぶん気持がちがうものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
しかしいつのにかひととほくよりるやうにつた。ちが女房等にようばうらひたひママれてねむつて痛々敷いた/\しいおもふのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
自分がロダン先生のかつて製作された夫人の肖像に寸分ちがひのないかただと思つたのは、一つは髪の結様ゆひやう其儘そのままの形だつたからかも知れない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すがたもている、年かっこうもたいしてちがうまい、ただ蛾次郎よりは少しがひくくまなざしやくちもとにりんとしたところがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おやないだが、成長せいてうしたらアノとほりの獰惡振だうあくぶりを相續さうぞくするにちがひない、環境かんけうつみだいつそうちつてやらうかとおもつて、また躊躇ちうちよした。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
しからば如何いかなる種類しゆるゐ食物しよくもつ適當てきたうであるかと具體的ぐたいてき實際問題じつさいもんだいになると、その解決かいけつはなは面倒めんだうになる。熱國ねつこく寒國かんこくではしよく適否てきひちがふ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
如何どうかんがへても聖書バイブルよりは小説せうせつはう面白おもしろいにはちがひなく、教師けうしぬすんでは「よくッてよ」小説せうせつうつゝかすは此頃このごろ女生徒ぢよせいと気質かたぎなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
千穂子の赤ん坊は月足らずで生れたせいか、小さい上にまるで、さるのような顔をしていて、赤黒いはだの色が、普通ふつうの赤ん坊とはちがっていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「もう大丈夫だいじょうぶです」とさるはいいました。「人形は盗賊とうぞくどものところにあるにちがいありません。私が行って取りもどしてきましょう」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
さればその書翰は、入院中の彼女に送るべきものなりしに、重井の軽率にも、妾への書面と取りちがえたるなりとは、天罰とこそいうべけれ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それかられがたゝりはしないか/\といふ気病きやみで、いまいふ神経病しんけいびやうとかなんとかふのだらうが、二代目はそれを気病きやみにしてつひちがつた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
片身かたみちがいに足を動かしているうちに、いつのまにか平七はふらふらと、ゆうべのあの石原町の小料理屋の方へ歩いていった。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
桃林和尚たうりんをしやうはそのはなしいてつてりましたから、いづれきつねがまたなに惡戯いたづらをするためにおてらたづねてたにちがひないと、すぐかんづきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
景樹かげきうたほうが、みんなにわかりやすからうとおもひますが、そこが散文さんぶんとのちがふところで、意味いみうへからおもしろいことが
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
この土器どき石器せつきも、日本につぽんのものは餘程よほどちがつたところがありまして、石器時代せつきじだいすゑ金屬きんぞく使用しようされるようになつた時代じだいのものかもれません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
豫想してゐた。こゝのは、今迄聞いてゐた家庭教師のもてなし方とはちがふ。だが、私はあんまり早く喜び過ぎてはいけない。
ほかのこととはわけちがい、あたしゃかずあるおきゃくのうちでも、いの一ばんきらいなおひと、たとえうそでも冗談じょうだんでも、まないことはいやでござんす
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つた聖約翰せいヨハネ荒野あれの蝗虫いなごしよくにされたとか、それなら余程よほどべずばなるまい。もつと約翰様ヨハネさま吾々風情われわれふぜいとは人柄ひとがらちがふ。
やま陽炎かげらふえてきます。ところによつて時季じきはむろんちがひますが、東京附近とうきようふきんでは三月さんがつ中旬頃ちゆうじゆんごろから五月頃ごがつごろまでに、します。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
カマチこわされた問題の扉は、厚さ二寸もあるカシの木で、縦に長く、巾三寸位の山形の彫んだ刻みが、一行ずつ、ちがたがいの切り込み模様がついていた。
(新字新仮名) / 楠田匡介(著)
気持きもちがいいだって! まあおまえさんでもちがったのかい、たれよりもかしこいここのねこさんにでも、女御主人おんなごしゅじんにでもいてごらんよ、みずなかおよいだり
その人のお供の者たちも、やはりみんな、赤ひものついた、青ずりの着物を着ていまして、だれが見ても天皇のお行列と寸分すんぶんちがいませんでした。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ついに非望のげられないことをさとった紀昌の心に、成功したならば決して生じなかったにちがいない道義的慚愧ざんきの念が、この時忽焉こつえんとして湧起わきおこった。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「それにこれから帝大ていだいを出るのとアメリカへいって勉強するのでは将来がだいぶちがってきますから、本人の自由意志できめさせたいと思ったのです」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分にあてがわれたきらびやかな縮緬ちりめんの座ぶとんを移して、それに倉地をすわらせておいて、ちがだなから郵便の束をいくつとなく取りおろして来た。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おーい、ガンの諸君しょくん、気をつけたまえよ!」と、またちがったほうからだれかがさけびます。「そんなほうへいくと、リューゲンへいっちまうぜ!」
其頃の土肥君は、色は黒いが少女おとめの様なつゝましい子であった。余は西郷戦争の翌年京都に往った。其れからかけちがって君に逢わざること三十三年。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
種吉では話にならぬから素通りして路地のおくへ行き種吉の女房にょうぼうけ合うと、女房のおたつは種吉とは大分ちがって、借金取の動作に注意の目をくばった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「もちろん、ありがたいことにはちがいないが……だが、それでどうしてあれらのことを、とやかく言えるのかね?」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
私が大和やまとの吉野のおくに遊んだのは、すでに二十年ほどまえ、明治の末か大正の初めころのことであるが、今とはちがって交通の不便なあの時代に、あんな山奥
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かれは自分が想像していた塾とはかなり性質のちがったものだということがわかり、ちょっと失望したようだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)