“窃”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方割合
ひそ29.7%
ひそか26.6%
ぬす15.4%
そっ9.4%
6.9%
そつ5.4%
こっそ2.3%
そう0.9%
0.9%
こっ0.6%
そッ0.3%
いじ0.3%
くす0.3%
こっそり0.3%
こッ0.3%
しの0.3%
ひそかに0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
其説に拠ると小十郎は何等の言をも発せずに終ったので、政宗は其夜ひそかに小十郎の家をうた。小十郎は主人の成りをよろこび迎えた。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お登和嬢ひそかに兄の袖をき「そうすると大原さんは二、三日内に御出発なさるようになりましょうか」と今更別るるを本意ほいなく思う。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
市九郎がしばしの暇をぬすんで、托鉢の行脚に出かけようとすると、洞窟の出口に、思いがけなく一椀のときを見出すことが多くなった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はて、不思議だと思いながら、抜足ぬきあしをしてそっけて行くと、不意に赤児の泣声が聞えた。よくると、其奴そいつが赤児を抱えていたのだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人はっと藁苞わらづとの中から脇差を出して腰に差し、ふるえる足元を踏〆ふみしめて此のの表に立ちましたのは、丁度日の暮掛りまする時。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(塔婆を見る。)そつと行つて返して來ようかしら。(起ちかけて又躊躇する。)あゝ、雪が降る。お父さまはさぞお寒いことであらう。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「考えていても仕方がない。味方を知り敵を知るは必勝の法と兵学にもある。これからこっそり出かけて行き、水狐部落の様子を見よう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うなると婦人の方が度胸のいもので、新吉の手を引いて病間へそうっと忍んで参りますと、惣右衞門は病気疲れでグッスリと寝入端ねいりばなでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「よし、よし、解った、確かにそれは仙妃じゃ、仙妃にもらったものじゃ、ったものじゃない」
賈后と小吏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
運ばれる屍骸の後を追って私は屠牛小屋へ行って、こっそりと牛の腹を裂いたのでございます。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うちの横町の角迄来てくすぐッたいような心持になって、そッと其方角を観る。果してポチが門前へ迎えに出ている。私を看附みつけるや、逸散いっさんに飛んで来て、飛付く、める。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
徒らに余をいじめたり威したりする訳ではなく真に余の一命を取る積りで掛って居るのだ、何も爾としか思われぬ。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
藤原が右京の屋敷を出たのもの女の為に多くの金をつかい果し今は困窮してあしたに出てゆうべに帰る稼ぎも、女房にょうぼや母をすごしたいからだ、其の夫の稼いだ金銭をくすねて置けばこそ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お花姉さんのには什麽どんなことが書いてあるか知ら、一つお手本を拝見してやろうとい所に気がついて、乃公はこっそりと姉さんのへやへ上って行った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は先刻さッきから存在を認めていられないようだから、其隙そのひまこッそり雪江さんのかおを視ていたのだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
其処で私は襤褸ぼろを纏い顔にローレルの粉を塗り、頭に馬皮の帽子を冠り、馬乳を入れたニッケル筒を藤蔓で左の脇下へ垂らし、桜の柄の付いた拳銃を上衣のかくしへしのばせました。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしてひそかにおもう、その立論の旨おおいに古説と同じからざるあるをもって、看者かんじゃ胸中の先入を一洗するにあらずんば、おそらくはその真意の向うところを認めざらんことを。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)